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不貞行為(不倫)離婚と慰謝料

(事案)

甲=夫、乙=妻、A=甲の不倫相手

 

2020年1月 甲乙間 婚姻

2021年1月 甲がAと不貞行為

その後半年間に亘って、甲・A間の不倫関係が続く。

2021年6月 乙が甲・A間の不倫関係に気が付く。

2021年7月 甲乙が離婚に向けて協議を開始する。

2022年1月 甲乙が協議離婚する。

 

Question1

2022年2月 

乙は甲に対し、甲・A間の不倫行為によりやむを得ず離婚となり、精神的苦痛を被ったことを理由として、慰謝料請求訴訟を提起した。

Question2

2022年2月

乙はAに対し、甲・A間の不倫行為により、精神的苦痛を被ったことを理由として、慰謝料請求訴訟を提起した。

Question3

2024年10月

乙はAに対し、甲・A間の不倫行為により、やむを得ず甲と離婚し、精神的苦痛を被ったことを理由として、慰謝料請求訴訟を提起した。

第1 乙の甲に対する慰謝料請求

1 離婚に伴う慰謝料の分類(文献①)

(1)請求の仕方による分類

① 個別慰謝料請求 

個々の不法行為(例えば、暴力)について慰謝料を請求する。

② 離婚慰謝料請求

相手方の有責行為(個々の不法行為を含む)により離婚を余儀なくされたことを理由として慰謝料を請求する。

 

実務では、①よりも②が圧倒的に多い。

(2)精神的苦痛の内容による分類

① 賠償慰謝料

  個々の不法行為により生ずる精神的苦痛についての慰謝料

② 離婚原因慰謝料

 個々の不法行為を原因とするが離婚へと発展する契機となる精神的苦痛についての慰謝料

③ 離婚自体慰謝料

 離婚そのものかに生じる精神的苦痛についての慰謝料

 

2 発生時期及び消滅時効等

① 個別慰謝料請求

 通常の不法行為に基づく損害賠償請求と同様

 損害発生と同時に履行遅滞に陥る。同日から遅延損害金が発生する。

 平成29年改正法が適用される事案では、民法724条、724条の2、159条(夫婦間の権利の時効の完成猶予)

② 離婚慰謝料

 法的性質:不法行為に基づく損害賠償請求権

 離婚の成立により発生する。

 離婚成立日の翌日から遅延損害金が発生する。

 離婚成立時から3年(民法724条)で消滅時効にかかる。

 

3 不貞行為

  離婚原因に不貞行為(民法770条1項1号)

→ 夫婦間に貞操義務がある。

→ 貞操義務の違反行為は、他方配偶者の夫又は妻としての権利を侵害するので、それ自体、独立して不法行為となる。

 

Question1では、乙の甲に対する慰謝料請求は認められる。

 

4 離婚慰謝料についての判例の考えた方(文献④)

(1)明治民法

 判例

 「離婚の止むなきに至った結果、精神的苦痛を被った」

→ 不法行為による慰謝料請求

 

 財産分与制度がない明治民法下では、離婚慰謝料は唯一の離婚給付の機能を果たす。

(2)戦後

 戦後、財産分与の制度が設けられたが、

 最判昭和31年2月21日は、離婚慰謝料を認める。

① 財産分与と離婚慰謝料は本質が異なる。

②「離婚するの止むなきに至ったことにつき、相手方に対して損害賠償を請求することを目的とするもの」

③ 不法行為に基づく。

④ ③にかかわらず、「身体、自由、名誉を害せられた場合のみ」に限定されない。→離婚原因となった個別の行為自体が独立の不法行為を構成することまでは必要でないと解される。

(3)離婚慰謝料の内実

① 離婚原因慰謝料

 離婚原因となった有責行為それ自体による精神的苦痛に対する慰謝料

② 離婚自体慰謝料

 離婚という結果そのものから生ずる精神的苦痛に対する慰謝料

 

 判例は、①と②を一体として捉え(一体説)、[相手方の有責行為]から[離婚]までの一連の経過を一個の不法行為と

捉え、【離婚慰謝料】は、<離婚自体慰謝料>だけではなく、<離婚原因慰謝料>も含む。

 離婚原因となる暴行・虐待、不貞等の不法行為は、(a)当該行為自体による通常の精神的苦痛<個別慰謝料>、(b)離婚へと発展する契機となる精神的苦痛<離婚原因慰謝料>の二側面があり、離婚に至ったとき、配偶者たる地位の喪失という新たな精苦痛苦痛<離婚自体慰謝料>が発生する。

 離婚原因となる不法行為は、日時・場所・態様が厳密に特定されることなく、概括的に主張されることがあり、不法行為の要件を満たしているといえなこともある。そして、慰謝料の金額の算定においては、離婚についての責任の有無・大小のほかの要素も考慮される。

第2 乙のAに対する、不貞行為を理由とする慰謝料請求

1 被侵害利益 婚姻共同生活の平和の維持

2 最高裁判所(第三小法廷)平成8年3月26日判決

 甲とAが肉体関係をもった場合において、甲乙間の婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、Aは、乙に対して、不法行為責任を負わない。このような場合、乙に、上記1の権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからである。

3 2からの派生論点

① 特段の事情

 実務上は次のとおりと思われる。

 甲・A 不貞行為 同棲

 その後、甲乙間の婚姻関係 破綻

 その後、甲・A 不貞行為又は同棲 継続

 

 上記下線部分は、不法行為が成立しなくなり、特段の事情はない。東京高判平成17年6月22日(判タ1202号280頁)

② 不貞行為の相手方Aの主観的態様

・ 甲乙間の婚姻関係の存在を知らない

・ 甲乙間の婚姻関係の存在は知っていたが、その破綻を信じ、これについて相当の理由がある場合

→ Aに故意・過失がないため、不法行為は成立しない。

③ 不貞行為=性交渉に当たらないが、不法行為となる行為はある。

第3 乙のAに対する、離婚を理由とする慰謝料請求

最高裁(第三小法廷)平成31年2月19日判決

① 離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦間で決められるべき事柄である。

② ①より、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない。

③ 第三者が当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うのは、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をする等して当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたと評価すべき特段の事情があるときに限られる。

→ 原則として否定

 

判例の考え方を前提とすると、Question3では乙のAに対する慰謝料請求は認められない。

 なお、この2024年10月の時点では、乙のAに対する不貞行為を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は既に消滅時効にかかっている(民法724条)。

 

第4 被害配偶者(乙)の他方配偶者(甲)に対する慰謝料請求と不貞の相手方(A)に対する慰謝料請求との関係

 最高裁判所第一小法廷平成6年11月24日判決

① 甲Aは共同不法行為であり、乙に対し不真正連帯債務を負う。

② 民法437条(平成29年改正前)は適用されない。

③ 離婚調停での乙の甲に対する債務免除は、乙のAに対する損害賠償請求に何ら影響を与えない。

 

 ③はいわゆる相対的免除であり、その結果、不貞の相手方Aから他方配偶者甲に対する求償関係が残る場合もある。 

【参考・参照文献】

 下記文献を参考・参照して作成しました。

① 加藤新太郎・松本明敏編集 裁判官が説く民事裁判実務の重要論点(家事・人事編)(平成28年、第一法規)77頁(長博文) 

② 山下純司・法学教室465号132頁

③ 能見善久・加藤新太郎編 論点体系判例民法10親族第3版87頁

④ 家原尚秀・最高裁時の判例(最判平成31年2月19日)ジュリスト1556号81頁 

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