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第1 空家等対策の推進に関する特別措置法の目的、空家等の意義
1 空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)(以下、単に「法」という。)の制定
2 目的(法1条)
(1)適正な管理が行われていない空家等が防災・衛生・景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響
→ 地域住民の生命・身体・財産を保護し、生活環境の保全を図る。
(2)空家等の活用を促進する。
→ 空家等に関する施策に関し、国による基本指針の策定、市町村(特別区)による空家等対策計画の作成その他の空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定める。
→ 空家等に関する施策を総合的・計画定期に推進
(3)(1)(2)により、
公共の福祉の増進と地域の振興に寄与
3 空家等の定義(法2条)
(1)空家等
① 建築物又はそれに附属する工作物
② 居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの
③ ①の敷地(立木その他の土地の定着物を含む。)
ただし、国又はは地方公共団体が所有し管理するものを除く。
(2)特定空家等
① 放置すれば
倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
著しく衛生上有害となるおそれのある状態
② 適切な管理が行われていないことにより
著しく景観を損なっている状態
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが
不適切である状態にあると認められる
空家等
第2 空家等の所有者等の責務
〇 法3条 空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活状況に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする。
第3 市町村
1 責務(法4条)
① 空家等対策計画の作成(法6条1項)
② 空家等に関する対策の実施
③ その他の空家等に関する必要な措置
を適切に講ずるよう努める。
2 立入調査等
〇 法9条
1項 市町村長は、当該市町村の区域内にある空家等の所在及び当該空家等の所有者等を把握するための調査その他空家等に関しこの法律の施行のために必要な調査を行うことができる。
2項 市町村長は、第14条第1項から第3項までの規定(特定空家等に対する措置)の施行に必要な限度において、当該職員又はその委任した者に、空家等と認められる場所に立ち入って調査をさせることができる。
3項 市町村長は、前項の規定により当該職員又はその委任した者を空家等と認められる場所に立ち入らせようとするときは、その五日前までに、当該空家等の所有者等にその旨を通知しなければならない。
ただし、当該所有者等に対し通知することが困難であるときは、この限りでない。
〇 法10条(空家等の所有者等に関する情報の利用等)
1項 市町村長は、固定資産税の課税その他の事務のために利用する目的で保有する情報であって氏名その他の空家等の所有者等に関するものについては、この法律の施行のために必要な限度において、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することできる。
固定資産税納税者情報は空家等の所有者・管理者を特定するのに役立つ有益な情報であるが、税務担当所得の秘密保持義務(地方税法22条-罰則)のため、空家等担当者がこれを利用できないとされていた。本条は、かかる状態を打破する規定である。
3 所有者等による空家等の適切な管理の促進
〇 法12条(所有者等による空家等の適切な管理の促進)
市町村は、所有者等による空家等の適切な管理を促進するため、これらの者に対し、情報の提供、助言その他必要な援助を行うよう努めるものとする。
4 特定空家等に対する措置
〇 法14条(特定空家等に対する措置)
1項 市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
2項 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し相当の猶予期限を付けて除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。3項 市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
4項 (省略)
5項 (省略)
6項 (省略)
7項 (省略)
8項 (省略)
9項 市町村長は、第三項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和23年法律第43号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
10項 第三項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第一項の助言若しくは指導又は第二項の勧告が行われるべき者を確知することができないため第三項に定める手続により命令を行うことができないときを含む。)は、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。
この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
条例との建付けの違い
条例
不適正管理状態(要件) → 助言・指導対象
空家対策措置法
特定空家等の認定 → 法14条
景観阻害の場合は、特定空家等の除却まで認められない。
行政代執行の要件(の一つ)が緩和されている(9項)。
不履行を放置することが著しく公益に反すると認められること
(行政代執行法2条)
↓
この要件を充足しなくても、行政代執行が可能(緩和代執行)
第4 国土交通大臣・総務大臣
空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための
基本的な指針(基本指針)を定める。(法5条)
第5 都道府県
市町村に対する援助(法8条)
【参考・参照文献】
下記文献を参考・参照して、作成しました。
① 北村喜宣「空家対策特別措置法の制定と市町村の空き家対応施策」(論究ジュリスト2015年秋号70頁)
【参考・参照文献】
以下の文献を参考・参照して、このページを作成しました。
〇 鎌田薫・松岡久和・松尾弘編、新基本法コンメンタール物権(令和元年、日本評論社)
〇 平野裕之・コア・テキスト民法Ⅱ物権法(第2版)(2018年、新世社)頁