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債権法改正 代理(その1)

民法 第1編 総則
第5章 法律行為
第3節 代理

○ 民法99条(代理行為の要件及び効果)

1項 代理人がその権限内において本人のためにすることとを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

2項 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

○ 民法100条(本人のためにすることを示さない意思表示)

 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。

 ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又はは知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。

○ 民法101条(代理行為の瑕疵)

1項 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人によって決するものとする。

2項 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。(平成29年改正により追加)

3項 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。

 本人が過失によって知らなかった事情についても、同様子とする。(平成29年改正により改正)

 

旧101条(代理行為の瑕疵)

1項 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人によって決するものとする。

2項 特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

1 平成29年改正前の法・101条1項においても、代理行為の瑕疵については代理人について決すると解されていたが、

① 代理人が相手方に対し意思表示をした場合

  (代理人B → 相手方C)

  代理人の主観を基準とする。

② 相手方が代理人に対し意思表示をした場合

  (代理人B ← 相手方C)

  代理人の主観を基準とする。

①②を区分して規定されていなかった。

平成29年改正法は、①(1項)、②(2項)を区別して規定した。

2 代理人が相手方に対し詐欺をした場合

 大審院の判例で旧101条1項を適用したものがあるが、この場合、意思表示の瑕疵は、代理人ではなく相手方にあること、及び相手方の意思表示の効力が「代理人の主観によって影響を受けるべき場合」でないのであるから、本条は適用されず、民法96条1項を適用すれば足りる。

 代理人の詐欺等によって相手方が意思表示をした場合には代理の規定が適用されないことを明確化した。すなわち、「意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことつき過失があったことによって影響を受けるべき場合」だけを対象とした。

3 このような場合、公平の観点から、本人の悪意・有過失を考慮するものであるが、旧101条2項は規定上「本人の指図」を要するものとしていた。大審院の判例は、解釈により、「本人の指図」を不要としていたので、平成29年改正法は、「本人の指図」の文言を削除した。

○ 民法102条(代理人の行為能力) 

制限行為能力者(B)が代理人としてした行為(本人:A)は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者(B)が他の制限行為能力者(本人:A)の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

旧102条(代理人の行為能力)

 代理人は、行為能力者であることを要しない。

1 趣旨 

 代理人(B)がした行為の効果=本人(A)に帰属し、代理人(B)に帰属しない。

→ 代理人が制限行為能力者(未成年者、被保佐人)である場合、その者を保護するため、行為能力の制限による取消しを認める必要性はない。

2 平成29年改正

 平成29年改正前の旧102条は、上記1の趣旨が読み取ることができないおそれがあったので、その旨明記した。

 あわせて、制限行為能力者(B)が他の制限行為能力者(A)の法定代理人としてした行為は、他の制限行為能力者(A)を保護するため、その者(A)行為の制限に基づき取り消すことができることを念のため明記した。

○ 民法103条(権限の定めのない代理人の権限)

 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。

一 保存行為

二 代理の目的である物又は権利の性質を代えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 

○ 民法104条(任意代理人による復代理人の選任)

 委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

改正前の法 旧105条 【平成29年改正により削除】

1項 代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。

2項 本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。

 ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

1 任意代理人が復代理人を選任できる要件

① 本人の許諾を得たとき

② やむを得ない事由があるとき

2 平成29年改正前の法

1の要件が厳格であるため、任意代理人の責任を軽減しようとした。→ 旧105条

3 平成29年改正法

 2の考え方は、合理的とはいえない。

→ 旧105条を削除

 復代理人の選任した任意代理人の責任は、債務不履行の一般原則にしたがって判断される。その結果、復代理人の選任・監督について任意代理人に過失がない場合であっても、復代理人の過失が信義則上任意代理人の過失と同視されることにより、任意代理人は本人に対し免責されなくなる。

○ 民法105条(法定代理人による復代理人の選任)

 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。

 この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

改正前の法 旧106条 【平成29年改正前】

 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。

 この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第項の責任(※)のみを負う。

※ 旧105条1項:復代理人の選任及び監督についての責任

○ 民法106条(復代理人の権限等)

1 復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。

2 復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権限を有し、義務を負う。

○ 民法107条(代理権の濫用)(平成29年改正により新設)

 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。(平成29年改正により追加)

 

1 代理人が自己又は第三者の利益を図るために代理権の範囲内で代理行為(代理権濫用行為)であり、相手方が代理権濫用行為について悪意又は善意・有過失である場合、民法93条ただし書を類推適用として、代理行為の本人への効果帰属を否定する判例法理を明文化したものである。

2 この場合、代理権濫用行為を無権代理とみなす。

→ 本人による追認(民法113条)、代理人に対する責任の追及(民法117条)が可能となる。

 

 自己契約規制による本人保護の違い

① 自己契約

 本人保護のため、定型的に代理権が制限される。

② 代理権濫用

 本来は、代理権の範囲に含まれる。

 例外的に、無権代理として扱われる。

 これは、本人の利益のために行使されるべき代理権がその趣旨に反して行使されている点で権利濫用といえる、または、その点について悪意・有過失の相手方が本人への効果帰属を主張することは信義則に反するからである。(吉永一行・法学教室479号p80~)

 

 

 

○ 民法108条(自己契約及び双方代理等)(平成29年改正)

1項 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

 ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

2項 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。

 ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

旧108条(自己契約及び双方代理)

 同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。

 ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

1 平成29年改正前

① 自己契約

② 双方代理

③ ①②に該当しない本人・代理人間の利益相反行為(解釈)

 

①②③を禁止しており、判例はこれらが無権代理に当たると解していた。

2 1項

①②の場合は無権代理に当たることを明文化した。

3 2項

③の場合を明文化した。 

 

 自己契約が無権代理と擬制される理由は、本人の利益が害される危険性が定型的に大きいからである。本人の利益が実際に害されることは無権代理と擬制されるための要件ではない。

(吉永一行・法学教室479号p80~)

経過措置

(代理に関する経過措置)

附則7条

1項 施行日前に代理権の発生原因が生じた場合(代理権授与の表示がされた場合を含む。)におけるその代理については、附則第三条に規定するもののほか、なお従前の例による。

2項 施行日前に無権代理人が代理人として行為をした場合におけるその無権代理人の責任については、新法第百十七条(新法第百十八条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 

【参考・参照文献】

 このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。

① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)13頁

② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)25頁

③ 大阪弁護士会民法改正問題特別委員会編 実務家のための逐条解説新債権法(2021年、有斐閣)32頁

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