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      抵当権(その1)総則

民法 第2編 物権
第10章 抵当権
第1節 総則

〇 民法369条(抵当権の内容)

1項 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 

2項 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。

 この場合においては、この章の規定を準用する。

 

1 対抗要件主義

(1)第三者(第三取得者、用益物権、不動産賃借権)

   との関係

   民法177条

(2)抵当権相互の関係

   民法373条

2 順位昇進の原則(日本)、順位確定の原則(ドイツ) 

 

 

3 物上保証人

 

第三者 物上保証人

債務者に対する求償権 民法372条・351条

 

最判平成2年12月18日 

(判旨)

物上保証人の事前求償権は否定する。

(理由)

① 規定が存在しない。

② 物上保証人は、債務者から保証債務の弁済の委任を受けた保証人と異なり、債務者から抵当権の設定の委任を受けたのみであり、債務負担行為の委任を受けていない。

 

 

 

 

〇 民法370条(抵当権の効力の及ぶ範囲)

 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。

 ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。

1 抵当権の効力が及ぶ目的物の範囲

  土地:土地+付加一体物

  建物:建物+付加一体物

2 付合物

 付加一体物に含まれる。

□ 大判昭和5年12月18日

 雨戸、建物入口の扉その他建物の内外を遮断する建具類について、建物の一部を構成することを理由に、建物に抵当権が設定された後に取り付けられたものであっても、抵当権の効力が及ぶ。

3 従物

 判例は、従物は付加一体物に含まれないとする。

 その上で、抵当権設定時に存在する従物については、民法87条2項又はその法理により、抵当権の効力が及ぶとする。

□ 最判昭和44年3月28日

  抵当権設定当時 抵当権が設定された宅地上の

① 石灯籠、取り外しのできる庭石 従物

② 植木、取り外しの困難な庭石  宅地の構成部分

①②とも抵当権の効力が及ぶ。

□ 最判平成2年4月19日

 ガソリンスタンド店舗建物に抵当権が設定された事案

 抵当権設定当時に存した、地下タンク、ノンスペース型計量器、洗車機等の諸設備 → 抵当権の効力が及ぶ。

3 例外

(1)設定行為に別段の定め

 登記をしないと、第三者に対抗できない(不動産登記法88条1項4号)。

(2)第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合  

〇 民法371条

 抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。 

 1  抵当権の目的不動産の使用収益権は抵当権設定者に委ねられているから、そこから生じる果実の収取権も抵当権設定者が有する。

 しかし、債務不履行後は抵当権の実行後の段階であるから、抵当権の効力が果実に及ぶ。

2 果実には天然果実・法定果実(賃料)双方を指す。

3 担保不動産収益制度(民事執行法180条2号)の基礎には、本条がある。

4 賃料に対する物上代位も同じ機能を果たす。

〇 民法372条(留置権等の規定の準用)

 第296条(留置権の不可分性)、第304条(物上代位)及び第351条(物上保証人の求償権)の規定は、抵当権に準用する。

〇 民法304条(物上代位)

 1項 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。

 ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。

2項 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

1   物上代位制度の趣旨(安永317頁)

① 代替的(代償的)物上代位

 目的物に関する損害賠償請求等、価値代替物に抵当権の効力を及ぼす。

② 付加的(派生的)物上代位

 収益的債権(賃料債権)に対するもの

2 法律構成

  民法372条 物上代位を定めた民法304条を準用

① 「先取特権(者)」を「抵当権(者)」、「債務者」を「抵当権設定者」と読み替える。

② 抵当権と先取特権の性質の違いを踏まえて解釈する。 

3 手続

① その払渡し又は引渡しの前に、② 差押え

 

 代位物に対する抵当権の実行である。

 抵当権が自ら、民事執行法193条の手続に従い、差し押さえることが必要である。 

 

売買代金債権、損害賠償債権等を払渡しの前に差し押さえ、第三債務者に対しその支払を求めることで、抵当権の優先弁済権を行使する。(安永316頁)

【賃料債権に対する物上代位(1)】

1 平成元年最判前

  肯定説、否定説

2 最判平成元年10月27日

 先取特権の規定の抵当権にそのまま準用し、これを認めた。

3 平成15年(2003年)の法改正

 被担保債権の債務不履行後に生じた果実(賃料を含む)に抵当権の効力が及ぶことを明確にした。

4 安永説(安永317頁)

 民法371条が被担保債権不履行後の果実(賃料等)に抵当権が及ぶ実体法上の根拠である。

 民法372条は、担保不動産収益執行と並んで、賃料に対する物上代位権行使という方法によって抵当権を実行してよいという意味を付与するにとどまる。

 

【賃料債権に対する物上代位(2)】

(安永321頁)

転貸賃料に対する物上代位

1 問題点

(事案

G(債権者・抵当権者)→S(債務者・抵当権設定者)

S(賃貸人)→D(賃借人・転借人)→M(転借人)

 

① 民法372条・304条の文言上は、抵当権者は、D→Mの転貸 賃料債権に対する物上代位権を行使できない。

② 賃料債権に対する物上代位行使を妨害する目的で、賃貸借関係(SM間)を転貸借関係(SD間、DM間)に改変する事案もあり、これに対する対処が必要である。

2 判例(最決平成12年4月14日)

(1)原則

 抵当不動産の賃借人(転貸人)は、被担保債権の不履行につついて抵当権不動産をもって物的責任を負担する所有者と異なる。 

 自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にない。

 これを認めると、正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。

→ できない。

(2)例外

 法人格を濫用し、又は賃貸借を仮装した上で、転貸借関係を作出したものであるなど、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当する場合

→ できる。

【参考・参照文献】

以下の文献を参考・参照して、このページを作成しました。

□ 鎌田薫・松岡久和・松尾弘編、新基本法コンメンタール物権(令和元年、日本評論社)

□ 安永正昭 講義物権・担保物権法(第4版)(2021年、有斐閣)313頁 略称:安永

□ 石田穣 担保物権法(2010年、信山社)255頁

⑤ 内田貴 民法Ⅲ 債権総論・担保物権第4版(2020年、東京大学出版会)477頁 

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