【注力分野】相続(相続調査、相続放棄)、遺産分割(協議、調停・審判)、債務整理、自己破産、個人再生、法律相談

大阪府寝屋川市にある相続と借金の問題に力を入れている法律事務所です。

京阪電車 寝屋川市駅から10分程度

受付時間
10:00~18:00
休業日
土曜日、日曜日、祝日

お気軽にお問合せください

072-812-1105
炭竈法律事務所(寝屋川市)へようこそ

債権法改正 請負契約

民法第3編 債権
第2章 契約
 第9節 請負

632条~642条

 

1 請負人の注文者に対する仕事完成義務、注文者の請負人に対する報酬支払義務を旨とする双務契約、諾成契約である。

2 改正法における担保責任の位置づけ

 改正法は、担保責任について、契約の目的物が契約に適合していない場合における債務不履行責任として立論した。

 この点において、売買契約と請負契約に区別はないため、請負契約においては、原則として個別に規定を設けるのではなく(このため旧法の規定を削除した。)、売買契約の規定を包括的に準用する(民法559条)方式で対応することになった。

 

① 瑕疵修補請求権(旧634条1項)→買主の追完請求権(新562条

② 報酬減額請求権→買主の代金減額請求権(新563条)

③ 解除権・損害賠償請求権(旧635条、旧638条、旧634条2項)→買主の解除権・損害賠償請求権(新564条、新541条、新542条、新415条)

④ 担保責任を負わない特約(旧640条)→同特約(新572条)

⑤ 担保責任の存続期間の伸長(旧639条):廃止

 

3 経過措置

 施行日前に締結された請負契約及び契約に付随する特約については、従前の例による(改正前の法が適用される)。附則34条1項

〇 民法632条(請負)

 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

〇 民法633条(報酬の支払時期)

 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。

 ただし、物の引渡しを要しないときは、第624条1項の規定(雇用報酬の支払時期)を準用する。

〇 民法634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)

 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。

 この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。

一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。

二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。

 

1 請負人は、仕事を完成しない場合、注文者に報酬を請求権できない(632条)。契約後、途中で、仕事の完成が不能となってしまった場合、報酬請求権の取扱いについて、改正前の法は規定を設けていなかった。

 改正法は、これまでの判例法理を踏まえた上で、新たに規定を設けた。

2 適用要件

 下記(1)(2)の要件を満たす場合

(1)請負人が既にした仕事の結果が可分であり、その部分によって、注文者が利益を受けること。

(2)1号又は2号に該当すること。

1号 仕事を完成できなくなったことが、注文者の責めに帰することができない事由によること

 下記①②いずれかの場合

① 当事者双方の帰責事由による完成不能

② 請負人の帰責事由による完成不能

 ②の場合、注文者はに損害が生じた場合、報酬(利益の割合に応じたもの)のほか、損害賠償を請求できる。

 

     なお、注文者の帰責事由による完成不能の場合

  改正法536条2項が適用される。

 → 請負人は注文者に対し、報酬全額を請求できるが、自己の債務を免れることにより得た利益を注文者に償還する。

2号 仕事完成前に請負が解除されたこと

 解除した者が請負人、注文者いずれを問わず、公平の見地から、一部の報酬請求を認める趣旨である。

 債務不履行による解除の場合、損害賠償の請求は、報酬とは別途である。

〇 民法636条(請負人の担保責任の制限)

 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

 ただし、請負人がその材料又は指図が不適合であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

改正前の法634条(請負人の担保責任)

1項 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。

 ただし、瑕疵が重要でない場合において、その瑕疵に過分の費用を要するときは、この限りでない。

2項 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。

1 旧634条は削除された。修補に過分の費用を要する場合、修補は社会通念に照らして履行不能となり(民法412条の2)、修補請求できない。この場合、修補費用相当額を損害として賠償請求もできない。

2 修補に代わる損害賠償請求について新415条2項が適用され、契約解除権が発生しないため、損害賠償請求できないか等疑義がある。

 この点、新415条2項は、不完全な履行がされた場合における損害賠償請求権は射程外であり、軽微な不適合のため契約解除ができない場合出会っても、修補請求することなく、修補に代わる損害賠償請求ができると解される。

改正前の法635条(請負人の担保責任)

 仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。

 ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。

1 旧635条は削除された。仕事の目的物が契約内容に適合しない場合は、債務不履行の一般原則が適用され、催告解除(新541条)、無催告解除(新542条)の対象となる。

2 契約目的を達成できる場合であったとしても契約解除できる。但し、債務不履行が軽微である場合は解除できない(新541条ただし書き)

3 仕事の目的物が建物その他の土地の工作物であっても、そのことだけでは、契約解除は制限されない。

改正前の法639条(担保責任の存続期間の伸張)

 第637条及び前条第1項の期間は、第167条の規定による消滅時効の期間内に限り、契約で伸張することができる。

改正前の法640条(担保責任を負わない旨の特約)

 請負人は、第634条又は第635条の規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることがではない。

1 旧639条関係 

 改正法により、請負に関する担保責任の規定は、契約責任説の見解に基づき整理された上、個別の担保責任に関する規定は削除され、売買の規定を包括的に準用することになった(新559条)。売買には担保責任の存続期間を伸張する規定は存在せず、これと合わせるため、旧639条は削除された。

 改正法においては、注文者の権利の期間制限(新637条)による。この期間が、特約により変更できるかは解釈に委ねられる。

2 旧640条関係

 売買の規定を包括的に準用することになった(新559条)。これにより、新572条が請負に準用され、改正前の法による規律は実質的に維持される。

〇 民法637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)

1項 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

2項 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。

改正前の法637条

1項 前3条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から1年以内にしなければならない。

2項 仕事の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する。

改正前の法638条

1項 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後5年間その担保の責任を負う

 ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、10年とする。

2項 工作物が前項の瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、注文者は、その滅失又は損傷の時から1年以内にに、第634条の規定による権利を行使しなければならない。

 

1 改正法は、注文者による権利の期間制限について、売買における買主のそれと同様の規制を設けた。

2 起算点

○ 改正前の法

  請負人の注文者に対する仕事の目的物の引渡し時

又は請負人の仕事が終了した時

  (から1年間)

○ 改正法

注文者が目的物について不適合の事実を知った時(から1年間)

3 注文者が期間内に為すべきこと

請負人に対し目的物について不適合の事実を通知すること。

4 期間

① 起算点から1年間に通知

② 通知後の権利行使(追完請求権、報酬減額請求権、損害賠償請求権、解除権)

  消滅時効の一般原則により、

  主観的起算点から5年、客観的起算点から10年

5 請負人が目的物の引渡し時又は仕事の終了時、目的物について不適合であることを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合

 請負人を保護する必要性なし → 新637条1項は適用されない。消滅時効の一般原則による。

6 旧637条は削除された。このため、改正法においては、土地の工作物についても新637条が適用される。

 〇 民法641条(注文者による契約の解除)

 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

〇 民法642条(注文者についての破産手続の開始による解除)

1項 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。

 ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。

2項 前項に規定する場合において、請負人は、既にした仕事の報酬及びその中に含まれていない費用について、破産財団の配当に加入することができる。

3項 第1項の場合には、契約の解除によって生じた損害の賠償は、破産管財人が契約の解除をした場合における請負人に限り、請求することができる。

 この場合において、請負人は、その損害賠償について、破産財団の配当に加入する。

1  請負における注文者が破産手続開始決定を受けた場合、請負は仕事の完成が報酬の支払いより先に履行しなければならないから、注文者の破産管財人のほか、請負人にも契約解除権を認めないと、請負人に不利益である。

 この点についての考え方は、改正前の法も改正法も同じ。

 改正前の法は、請負人による契約解除権について時期的制限を加えていなかったが、仕事が完成した後は、請負人による契約解除権を認めなくても、請負人に不利益でない。

 そこで、請負人による契約解除権を仕事完成前に限定した。→ 新642条1項ただし書き

2 旧642条1項後段 → 新642条2項 (移行して維持)

3  旧642条2項 → 新642条3項(移行して維持)

【請負人の担保責任に関する諸問題】

1 注文者が請負人に対する瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を有する場合(A債権、例 10万円)、請負人の注文者に対する報酬請求権(B債権 例 100万円)行使に対し、① 同時履行の抗弁権を主張した上、② 対当額にて相殺した場合の法律関係

2 A債権とB債権と同時履行の関係に立つ(旧法634条2項、新法533条かっこ書)。

 注文者は、B債権全額について、自己の債務の履行を拒絶することができ、履行遅滞責任も負わない。

3 相殺により、A債権は全額消滅し、B債権は10万円消滅し、90万円となる。

 A債権分(例では10万円)については、B債権は相殺の遡及効により履行遅滞はないことになる。ところが、A債権を超過する分(例では90万円)については、相殺により消滅しないので、同時履行の抗弁権がなければ、履行遅滞責任が発生する。

4 下記(参考判例)は、注文者の同時履行の抗弁権が認められず、履行遅滞責任が発生する場合として、

 瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等に鑑み、瑕疵修補に代わる損害賠償請求権をもって報酬残債権全額の支払いを拒むことが信義則に反すると認められる場合を挙げる。

 

[参考判例]

最判平成9年2月14日

[参考文献]

① 松井和彦 条文だけからはわからない民法の解釈Ⅳ

  債務の履行に代わる損害賠償債務と反対給付債務の

  同時履行の抗弁権 法学教室490号25頁

 

【参考・参照文献】

 このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。

① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)332頁

② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)485頁

③ 平野裕之 債権各論Ⅰ契約法(2018年、日本評論社)333頁

お電話でのお問合せはこちら

072-812-1105

メールでのお問合せは、24時間受け付けております。お気軽にご連絡ください。

ご連絡先はこちら

炭竈法律事務所
072-812-1105
住所・アクセス
大阪府寝屋川市八坂町9−3 日経ビル5階

京阪電車 寝屋川市駅から10分程度