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物権法-占有権

民法第2編 物権
第2章 占有権

第1 民法(第二編物権、第二章占有権、180条~205条)は、事実上の支配である占有に一定の法的保護を与え、様々な法的効果を付与している。

第2 占有の種類

1 直接占有と間接(代理)占有

① 直接占有

  自ら占有する場合

② 間接(代理)占有

 占有代理人を介しての占有、民法181条

 占有代理人(※)は、所持を有すればよく、自己のためにする意思は不要

 

※ 占有代理人と占有機関との違い

 例えば、店主の代わりに店員が店内の物を監視している場合、店員は店主の占有機関(占有補助者)であり、店主のみが占有者である。

 

2 自主占有と他主占有

① 自主占有

  所有の意思をもってする占有

② 他主占有

所有の意思をもたない、つまり他人の所有物としてする占有

3 善意占有と悪意占有

① 善意占有

  他人の所有物をそれ(他人の所有物)と知らずにする占有

② 悪意占有

  他人の所有物をそれ(他人の所有物)と知ってする占有

          第1節 占有権の取得

180条~187条

〇 民法180条(占有権の取得)

占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

【解説】

1 占有権取得の要件

① 主観的要件 

  自己のためにする意思

  所有の意思(フランス民法)まで不要である。

  → 賃借人、受寄者にも認められる。

  占有が生じた原因の性質によって、占有意思の有無を

  客観的に判断する(緩和された主観説)。

 

② 客観的要件

  物を所持すること

〇 民法181条(代理占有)

 占有権は、代理人によって取得することができる。

〇 民法182条(現実の引渡し及び簡易の引渡し)

1項 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。

2項 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。

〇 民法183条(占有改定)

 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

〇 民法184条(指図による占有移転)

 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。

 

【自主占有と他主占有】

1 自主占有には(その他の要件を満たせば)取得時効及び無主物先占が認められるが、他主占有には認められない。

2 所有の意思の有無は、占有者の内心によって判断されるのではなく、① 占有取得の原因である権原、② 占有に関する事情より、外形的客観的に判断される(判例)。

 売買契約、贈与契約等所有権を移転させる契約に基づく占有→ 自主占有

 賃貸借契約、使用貸借契約に基づく占有 → 他主占有

3 自主占有は民法186条によって推定されるため、これを争う者が、①他主占有権原、②他主占有事情を反証しなければならない。

 

※ 最判昭和58年3月24日(お綱の譲り渡し事件)

① 他主占有権原

 占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明される。

② 他主占有事情

  占有者が、占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかったなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情

が証明されること。                

〇 民法185条(占有の性質の変更

 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有させた者に対して所有の意思があることを表示し、又は又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。

 

 1 他主占有の占有者に取得時効が認められないのは、真の権利者に時効中断の機会を保障する必要があるからである。

 他主占有の占有者に、下記①②の事実があれば、真の権利者の時効中断の機会保障の観点から問題がないので、他主占有から自主占有への変更を認めた。

① 占有者が、自己に占有させた者に対して所有の意思があることを表示したこと

② 占有者が、「新たな権原」により更に「所有の意思」をもって占有を始めたこと

2 共同相続人が、他の共同相続人の持分について取得時効できるか。 

 共同相続人の一人が、単独に相続したものと信じて疑わず、相続開始とともに相続財産を現実に占有し、その管理、使用を専行してその収益を独占し、公租公課も自己の名でその負担において納付してきており、これについて他の相続人がなんら関心をもたず、もとより異議を述べた事実もなかった場合

その相続人は、相続の時から自主占有を取得したものと解される(最高裁昭和47年9月8日判決)。

〇 民法186条(占有の態様等に関する推定

1項 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。 

2項 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。

 本条は、占有ついての権利推定の効力を定めたものである。推定される事項は、所有の意思・善意・平穏・公然である。

2 登記された不動産については、登記の本権推定効が優先するので、本条は適用されない。

〇 民法187条(占有の承継

1項 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。 

2項 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。

1  被相続人=土地を他主占有(占有期間5年)、相続人が占有を承継(占有期間5年)→相続人は、自主占有により土地を時効取得できるか。

2 判例(最高裁昭和37年5月18日判決)の考え方

① 民法187条1項は、相続のような包括承継にも適用される。

②(被相続人が他主占有であれば、相続人が占有を承継するといっても他主占有のままであるので、時効取得できないが)

相続人が新たに土地を事実支配することにより占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合には、「新権原」(民法185条)により土地を自主占有するに至った。

→ 相続人による占有期間が10年又は20年であれば、時効取得できることになる。

      第2節 占有権の効力

188条~202条

〇 民法188条(占有物について行使する権利の適法の推定)
 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

 本条は、占有ついて所有権等本権推定の効力を定めたものである。

2 登記された不動産については、登記の本権推定効が優先するので、本条は適用されない。

〇 民法189条(善意の占有者による果実の取得等)
1項 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2項 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。

1 本条は、物が生じる果実(天然果実、法定果実)についての収取権を定めたものである。

2 善意占有者

① 天然果実

分離の時点で善意者が果実収取権を有する。民法89条参照

② 法定果実

  善意であった期間の果実収取権を有する。

3 悪意占有者

① 果実収取権はない。

② 収取した果実の返還義務等 民法190条1項

③ 暴行・強迫・隠避によって占有している者も同じ(民法190条2項)。

 

 

〇 民法190条(悪意の占有者による果実の返還等)
1項 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
〇 民法191条(占有者による損害賠償)
 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。
 ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。

1 本条は、占有者が故意・過失により占有物を滅失又は損傷させ、所有者等回復者に損害が生じた場合における、損害賠償責任等の特則を定めたものです。

2 善意占有者

 善意占有者を保護するための民法709条の特則

 現存利益

3 悪意占有者

① 損害全部の賠償義務

② 所有の意思のない善意占有者も同じ(本条ただし書)。

〇 民法192条(即時取得)
 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

□ 占有改定による占有移転と即時取得

 最(一小)判昭和35年2月11日(百選Ⅰ[9版]64番)

(事案)

 非所有者Bから水車発電機及び付属機械器具を買い受けたXが、物件の占有者Yら対し、物件の引渡し等を請求した事案である。裁判では、BX間の物件売買契約における物件の引渡しが占有改定によりなされたため、Xが物件を即時取得したかが争点となった。

(判旨)

 即時取得により所有権を取得するためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要する。

 占有改定の方法による取得をもっては足らない。

 

 

〇 民法193条(盗品又は遺失物の回復)
  前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
〇 民法194条
 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
〇 民法195条(動物の占有による権利の取得)
 家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。
〇 民法196条(占有者による費用の償還請求)
1項 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。
 ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2項 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。
 ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

1 本条は、占有者が占有物に費用をかけ、その後、占有物を所有者等回復者に返還した場合における、占有者の回復者に対する費用償還請求権を定めたものである。

2 占有者の回復者に対する必要費の償還請求権 本条1項

3 占有者の回復者に対する有益費の償還請求権 本条2項

〇 民法197条(占有の訴え)

 占有者は、次条から第202条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も同様とする。

1 占有の訴え(占有訴権)

 事実的支配の状態をそれ自体として保護する制度(文献④265頁)。

〇 民法198条(占有保持の訴え)

 占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

〇 民法201条(占有の訴えの提起期間)

1項 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。

 ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。

〇 民法199条(占有保全の訴え)

 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防及び損害賠償の担保を請求することができる。

〇 民法200条(占有回収の訴え)

1項 占有者がその占有を奪われたときは、、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。

2項 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

〇 民法201条(占有の訴えの提起期間)

1項 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。

 ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。

2項 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。

 この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。項 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。

〇 民法202条(本権の訴えとの関係)

1項 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。

2項 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

      第3節 占有権の消滅

○ 民法203条(占有権の消滅事由)

占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。

○ 民法204条(代理占有権の消滅事由)

1項 代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。

一 本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。二 代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。

三 代理人が占有物の所持を失ったこと。

2項 占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。

      第4節 準占有

○ 民法205条 

 この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。

【参考・参照文献】

 以下の文献を参考・参照して、このページを作成しました。

① 鎌田薫・松岡久和・松尾弘編、新基本法コンメンタール物権(令和元年、日本評論社)

② 平野裕之・コア・テキスト民法Ⅱ物権法(第2版)(2018年、新世社)141頁

③ 潮見佳男 民法(全)第3版(2022年、有斐閣)151頁

④ 安永正昭 講義物権・担保物権法(第4版)(2021年、有斐閣)243頁

 

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