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第1 死別と姻族関係の終了
1 死別した配偶者の父母等姻族との関係(三親等内の姻族は親族となる(民法725条三号))はどうなるのか。例えば、夫と死別した妻の、夫の母や兄弟姉妹との関係である。
離婚の場合、姻族関係は当然に終了します(民法728条1項)。
これに対し、死別の場合、姻族関係は当然には終了せず、生存配偶者がそれを選択した場合のみ(※)姻族関係は終了します(民法728条2項)。この場合、戸籍法96条に従って届出をする必要があります。
※ 立法論として批判もあるが、死亡配偶者の血族から生存配偶者に対する姻族関係終了の手続は認められていない。
2 「姻族関係の終了」の問題と「死別した配偶者の財産の相続」の問題とは別でして、例えば、夫が死亡した場合、妻は、姻族関係を終了させても、夫の遺産を相続することはできるとされています。相続は、夫の死亡時、妻であることによって発生しているからす。
3 姻族関係を終了させるか否かは、生存配偶者の選択の問題であり、真意に基づくものであれば、特に理由は問いません。
4 姻族関係が一旦終了させると復活できないので、慎重に対応する必要があるといえる。
5 姻族関係終了の効果
① 親族に付与されている権利義務は消滅する。これにより、
→ 三親等内の親族間は扶養義務を負担する可能性があるが、この可能性が消滅する。
例えば夫の親について成年後見の申立権者でなくなる。
これに対し、直系姻族間の婚姻障害(民法735条)、証言拒絶権(民事訴訟法196条1号、刑事訴訟法147条1号)等は、姻族関係終了後も存続する。
② 祭祀に関する権利の承継者の指定
民法751条2項
上記のほか、事実上の影響、例えば、それが配偶者の親族との関係が疎遠になる等が考えられる。
第2 死別と復氏
夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができます(民法751条1項)。この場合、戸籍法95条に従って届出をする必要があります。
「姻族関係の終了」の問題と「復氏」の問題とは別問題でして、例えば、夫が死亡した場合、妻は、姻族関係を終了させつつ、復氏しないことを選択できます。
〇 民法728条(離婚等による姻族関係の終了)
1項 姻族関係は、離婚によって終了する。
2項 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
〇 民法751条(生存配偶者の復氏等)
1項 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
2項 第769条(離婚による復氏の際の権利の承継)の規定は、前項及び第728条第2項の場合について準用する。
〇 民法769条(離婚による復氏の際の権利の承継)
1項 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項(祭祀に関する権利の承継)の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
2項 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
【参考・参照文献】
① 窪田充見 家族法(第4版)133頁(平成31年、有斐閣)
② 二宮周平編集 新注釈民法(17)(平成29年、有斐閣)57頁(床谷文雄)57頁、183頁