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交通事故 素因減額

交通事故 素因減額 総論

 

1 問題の所在

 Aさんは、普通乗用自動車を運転中、赤信号に従って停止していた時、後続車のBさんが運転する普通乗用自動車も停止していました。Bさんは、不注意で、右足をブレーキペダルから外してしまい、そのため、自動車が前進し(クリープ現象)、Aさんの自動車に追突しました。

 Aさんは、この事故により、頚椎捻挫を発症した他、主治医より、脊柱管狭窄症及び後縦靱帯骨化症等と診断されました。

 Aさんは、消炎鎮痛剤等内服薬の服用、リハビリに努めましたが、なかなか症状が改善されず、病院に2年間通院したものの、上肢にしびれ等の症状が残りました。

 脊柱管狭窄症及び後縦靱帯骨化症等のため、治療期間が長くなったと考えられる場合、損害賠償額の算定において、そのことをどのように考慮すべきであろうか。

 

2 素因減額についての判例

(1)心因的素因に関して

 最高裁昭和63年4月21日判決

(事案)

 自動車追突事故の被害者(重大な衝突ではない。女性)、事故後、外傷性頭頚部症候群の傷病名で入院、事故から10年経過までに、病院に入退院を繰り返した。

 原判決は、事故後3年間の損害について因果関係を認めたが、過失相殺規定の類推適用により4割の限度に減額した。

(判旨等

1 身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによって通常発生する程度、範囲を超えるものであって、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的素因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができるものと解するのが相当である。

2 被害者の上告棄却

 

(2)疾患に関して

 最高裁平成4年6月25日判決

(事案)

 タクシー運転手が停車中、追突の被害を受けた。頭部外傷、外傷性項部痛症等を負い、更に、記憶喪失に陥り、精神障害が発生し、事故から3年後、呼吸麻痺のため死亡した。本件事故の約1か月前、被害者はエンジンをかけたままタクシー内で仮眠中、一酸化炭素中毒に罹患し入院し、退院後、タクシー業務に復帰した。

 原判決は、本件事故による頭部打撲傷と被害者の精神障害・死亡の相当因果関係を認めた上、損害の5割を減額した。

(判旨等)

1 被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患がともに原因となって損害が発生した場合において、

当該疾患の態様、程度などに照らし、

加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、

裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、

民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、

被害者の当該疾患をしんしゃくすることができる。

2 被害者の上告棄却

 

(3)事故前疾患が発現していなかった場合に関して

 最高裁平成8年10月29日判決

(事案)

 自動車追突事故の被害者が、頚椎捻挫・腰椎捻挫と診断され治療を受けていたところ、事故から3年余り後の検査の結果、頚椎後縦靱帯骨化症に罹患していたことから、治療が長期化したり、後遺障害に寄与していることが判明した。

 原判決は、後縦靱帯骨化症の素因を有していたため拡大した損害について、全額を加害者に負担させた。

(判旨)

1 (2)判決を引用

2 1は、① 加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか、② 疾患が難病であるかどうか、③ 疾患に罹患するにつき被害者の責めに帰すべき事由があるかどうか、④ 加害行為により 被害者が被った衝撃の強弱、⑤ 損害拡大の素因を有しながら社会生活を営んでいる者の多寡等の

事情によって左右されるものではない。

3 破棄差戻し

 

(4)身体的特徴に関して

 最高裁平成8年10月29日判決

(事案)

 自動車追突事故の被害者が、頚椎捻挫により9か月程度入院した後、痛み等の症状が残ったが、被害者は、平均的体格に比して首が長く多少の頚椎の不安定症があるという身体的特徴を有していた。

 原判決は、被害者の損害について、過失相殺規定を類推適用して、4割を減額した。

(判旨等)

1 被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり、斟酌することはできない。

2 1の理由について。人の体格ないし体質は、すべての人が均一同質なものということはできないものであり、極端な肥満など通常人の平均値から著しくかけ離れた身体的特徴を有する者が、転倒などにより重大な傷害を被りかねないことから日常生活において通常人に比べてより慎重な行動をとることが求められるような場合は格別、その程度に至らない身体的特徴は、個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されている。

3 本件被害者の身体的特徴を、損害賠償額の算定に当たり斟酌するのは相当でない。

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