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債権法改正 詐害行為取消権(その1) のページ

民法第3編 債権
第1章 総則
 第2節 債権の効力
第3款 詐害行為取消権

         第1目 詐害行為取消権の要件

<平成29年改正の特徴>

① 取消要件について破産法の否認権に整合させる方針で詳細に整備

② 取消権行使方法について原則として従前の判例法理を明文化

③ 新設

  債務者に取消効を及ぼす規律(判例法理の変更)

  受益者・転得者の権利に関する規律

④ 取消権の期間制限について長期期間を10年に短縮化

大弁会163頁

<経過措置>

附則19条

 取消対象である債権者の行為時を基準に、

① 当該行為が施行日前 → 改正前法(旧法)

② 当該行為が施行日以後 → 改正法(新法)

<詐害行為取消権の要件>

1 要件概観(内田361頁)

(1)債権者側(被保全債権)

① 金銭債権であること

② 債権の取得が詐害行為前の原因に基づくこと

③ 執行力があること

(2)債務者側

① 客観的要件=詐害行為

債権者を害する行為、財産権を目的とする行為

② 主観的要件=詐害の意思

(3)受益者・転得者側

悪意

 

2 債権者側の要件=被保全債権

(1)被保全債権の種類

 詐害行為取消権の制度趣旨=責任財産の保全

→ 金銭債権

 

<論点>不動産の二重譲渡の場合

内田[ⅩⅠ-10]

 判例(最(大)裁昭和36年7月19日)

 特定物引渡請求権といえども、債務者が目的物を処分することにより無資力となった場合、特定物債権者はこの処分行為を詐害行為として取り消すことができる。かかる債権も、窮極においては損害賠償請求権に変じうるものであり、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様だからである。

 

 詐害行為取消権行使の時点では、特定物引渡請求権は損害賠償請求権となっている。詐害行為がされた時点では金銭債権である必要までないとしたもの(内田)。

(2)債権取得の時期

 詐害行為取消権の制度趣旨:責任財産の保全

→ 被保全債権の取得時期 詐害行為の前

→ 詐害行為の前の原因に基づいて生じたこと(平成29年改正民法424条3項)。

(3)その他

① 被保全債権は、履行期が到来している必要はない(判例・通説)。

② 執行力ある債権(強制執行により実現することができるもの)(424条4項)

〇 民法424条(詐害行為取消請求)(平成29年改正)

1項 債権者(A)は、債務者(B)が債権者(A)を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。

 ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」(C)という。)がその行為の時において債権者(A)を害することを知らなかったときは、この限りでない。

2項 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。

3項 債権者(A)は、その債権が第1項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。

4項 債権者(A)は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

 

旧424条

1項 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。

2項 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

 

1 新法の特徴

 ① 受益者を相手方とする詐害行為取消請求権と

   転得者を相手方とする詐害行為取消請求権とを

   区分して考える。

 ② 責任財産を減少させ行為(狭義の詐害行為)と

   特定の債権者を利する行為(偏頗行為)とを

   区分して考える。

2 本条

 受益者に対する詐害行為取消請求権について、旧法424条1項の規律を維持しつつ、旧法下の判例法理及び実務を明文化した。

3 本条1項

  「法律行為」→「行為」

   時効援用、弁済等も対象となるが(判例)、これらは

  厳密には法律行為とはいえないため。

4 本条2項

  旧法424条2項の規律を維持するもの

5 本条3項

  旧法下の考え方

   被保全債権が詐害行為の「前に」生じた

  新法

   被保全債権が詐害行為の「前の原因に基づいて生じた」

 

  規定上は、新法によって被保全債権の範囲が広がったと

 いえる。例えば、詐害行為前に成立した被保全債権に基づ

 き、詐害行為後に遅延損害金が発生した場合、遅延損害金

 も被保全債権となる(最判平成8年2月8日)。

6 本条4項

  旧法下の実務を明文化した。

7 本条(原則規定)と特則規定

  本条424条が原則規定

  424条の2~424条の4が特則規定 

〇 民法424条の2(相当の対価を得てした財産の処分行為の特則)(平成29年改正により新設)

 債務者(B)が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者(C)から相当の対価を取得しているときは、

債権者(A)は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者(B)において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。

二 債務者(B)が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。

三 受益者(C)が、その行為の当時、債務者(B)が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

1 趣旨

① 相当価格処分行為について、旧法下の判例と異なり、原則として詐害行為とせず、本条一、二、三の要件を全て充たした場合に詐害行為に当たるとした。

② 旧法下の判例は、破産法の否認要件と比較すると要件が不明確であり、また、平時での取消範囲が倒産手続での否認範囲よりも広くなること(逆転現象)もあった。→ 破産法161条1項の否認要件に整合させた。

〇 民法424条の3(特定の債権者に対する担保の供与等の特則)(平成29年改正により新設)

1項 債務者(B)がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、

債権者(A)は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その行為が、債務者(B)が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第1号において同じ。)の時に行われたものであること。

二 その行為が、債務者(B)と受益者(C)とが通謀して他の債権者(A)を害する意図をもって行われたものであること。

2項 前項に規定する行為が、債務者(B)の義務に属せず、又はその時期が債務者(B)の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、

債権者(A)は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その行為が、債務者(B)が支払不能になる前30日以内に行われたものであること。

二 その行為が、債務者(B)と受益者(C)とが通謀して他の債権者(A)を害する意図をもって行われたものであること。

 

1 趣旨

① 既存債務についての本旨弁済及び担保供与行為について、原則して詐害行為に当たることを否定し、第1項一及び二の要件(立証責任は債権者にある)を満たすとき詐害行為(偏頗行為)に当たる。

② 経緯1

  旧法下の判例法理(最判昭和33年9月26日)

ⅰ 要件が不明確

ⅱ 債務者の取引機会が閉ざされる。

③ 経緯2

  平成16年(2004年)破産法改正

  偏頗行為否認:支払不能基準

2 本条1項

(1)取消しの時期的要件、客観的要件

   債務者の支払不能時の行為

(2)取消しの主要件要件

債務者&受益者 通謀詐害意図

通謀詐害意図が認められるためには、受益者が債務者の支払不能を認識していることが必要であると解すべき(大弁会173頁)。

3 本条2項

(1)偏頗行為否認のうち非義務行為を、破産法162条1項2号と同内容のものとして規定した。

(2)時間的要件

 支払不能 →<拡張>→ 支払不能前30日以内の行為

(3)客観的要件

① 債務者の義務に属しない例:代物弁済(争いあり)

② 時期が債務者の義務に属しない例:期限前弁済

 

第2項一及び二の要件を満たすとき詐害行為(偏頗行為)に当たる。

(4)本条と424条との関係

 改正民法は、偏頗行為が424条にも該当しうることを前提に、本条の要件を満たす場合に限って取り消しうべきものとする。(大弁会173頁)

→ 理論的には・・・

 424条の無資力要件 + 本条の支払不能要件

〇 民法424条の4(過大な代物弁済等の特則)(平成29年改正により新設)

 債務者(B)がした債務の消滅に関する行為であって、受益者(C)の受けた給付の価格がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第424条に規定する要件に該当するときは、

 債権者(A)は、前条第1項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。

1 趣旨

 過大な代物弁済における過大部分の取消しが、偏頗行為取消要件(424条の3)によらずに、一般要件(424条)のもと可能であることを明記したものである。

2 既存債務80であるにもかかわらず代物弁済100を行った場合、過大な20については、責任財産減少行為の性質を有するため、過大な部分についてのみ一部取消しを認めた。

3 過大な代物弁済を424条により取り消す場合は、必然的に一部取消しとなる。(大弁会175頁)

〇 民法424条の5(転得者に対する詐害行為取消請求)(平成29年改正により新設)

 債権者(A)は、受益者(C)に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者(C)に移転した財産を転得した者(D、E)があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者(D,E)に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その転得者(D)が受益者(C)から転得した者である場合

その転得者(D)が、転得の当時、債務者(B)がした行為が債権者(A)を害することを知っていたとき。

二 その転得者(E)が他の転得者(D)から転得した者である場合

 その転得者(E)及びその前に転得した全ての転得者(D)が、それぞれの転得の当時、債務者(B)がした行為が債権者(A)が害することを知っていたとき。

 

1 転得者に対する詐害行為取消請求権行使の要件を規定した。

2 受益者(C)に対する詐害行為取消請求が認められるための要件を満たすことが必要である。

 受益者:善意 + 転得者:悪意

 旧法下の判例は、取消しを認めていた(相対的構成)。

 これを変更するものである。

3 一の場合

 転得者(D)

 転得の当時、債務者(B)の行為が債権者(A)を害することを知っていたこと。

4 二の場合

 転得者(E)およびその前の全転得者(D)

 転得の当時、債務者(B)の行為が債権者(A)を害することを知っていたこと。

         第2目 詐害行為取消権の行使の方法等

民法424条の6(財産の返還又は価格の償還の請求)(平成29年改正により新設)

1項 債権者(A)は、受益者(C)に対する詐害行為取消請求において、債務者(B)がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者(C)に移転した財産の返還を請求することができる。

 受益者(C)がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者(A)は、その価格の償還を請求することができる。

2項 債権者(A)は、転得者(D)に対する詐害行為取消請求において、債務者(B)がした行為の取消しとともに、転得者(D)が転得した財産の返還を請求することができる。

 転得者(D)がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者(A)は、その価格の償還を請求することができる。

1 詐害行為取消請求の法的性質について、旧法下の判例が採用していた折衷説を明文化した。

① 債務者の詐害行為の取消し請求

② 逸出財産の取戻し請求

2 逸出財産の取戻し方法として、旧法下の判例が採用していた見解を明文化した。

原則として現物返還、現物返還困難な場合は価格償還を請求できる。

3 1項が受益者に対する詐害行為取消請求、2項が転得者に対する詐害行為取消請求を定める。

〇 民法424条の7(被告及び訴訟告知)(平成29年改正により新設)

1項 詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする。

一 受益者(C)に対する詐害行為取消請求に係る訴え

   受益者(C)

二 転得者(D)に対する詐害行為取消請求に係る訴え

   その詐害行為取消請求の相手方である転得者(D)

2項 債権者(A)は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者(B)に対し、訴訟告知をしなければならない。

〇 民法425条(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)(平成29年改正

 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者(B)及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

旧425条(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)

 前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。

1 旧法下の規定及び判例

 ① 被告=受益者又は転得者/債務者に被告適格はない。

 ② 詐害行為取消請求認容判決(取消判決):債務者に

  対し、詐害行為取消しの効力が及ばない。

  → 債務者に対し、取消判決の効力が及ぶことを前提と

    した規律が必要である。

2 新法

 ① 被告適格

   旧法と同じ。424条の7・1項

 ② 取消判決

   債務者(※1)、全ての債権者(※2)に対しても

   効力が及ぶ。425条 ※3

   ※1 被告でない債務者にも効力が及ぶ。

      相対的取消説否定

   ※2 詐害行為時又は判決確定時より後に債権者

      となった者も含まれる。

   ※3 転得者に対する取消しの効果

      債務者・被告転得者に及ぶが、被告転得者の前者

      (受益者、中間転得者)に及ばない。

  

 ③ 訴訟告知

   債務者に被告適格はないが、取消判決の効力が及ぶ。

  債務者の手続保障のために、債務者に対し訴訟告知する。

  424条の7・2項

【参考・参照文献】

 このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。

□ 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)頁

□ 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)158頁

□ 内田貴 民法Ⅲ 債権総論・担保物権第4版(2020年、東京大学出版会)357頁 略称:内田

□ 大阪弁護士会民法改正問題特別委員会編 実務家のための逐条解説新債権法(2021年、有斐閣) 略称:大弁会

□ 近江幸治 民法講義Ⅳ債権総論(第4版)(2020年、成文堂)132頁 略称:近江

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