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改正法は、施行日以後に締結された贈与契約及びこれに付随する特約についてである。施行日前に締結された贈与契約及びこれに付随する特約については、なお従前の例による(改正前の法が適用される)。※ 附則34条1項
○ 民法549条(贈与)
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる。
改正前の法549条(贈与)
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる。
1 贈与契約の意義について、実質的な変更はない。
2 「自己の」財産(旧法)→「ある」財産(新法)
他人物贈与も債権的に有効であるとする判例を踏まえたものである。
○ 民法550条(書面によらない贈与の解除)
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。
ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
改正前の法550条
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。
ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
1 書面によらない贈与契約の効力を消滅させる要件について、実質的な変更はない。
2 「撤回」(旧法)→「解除」(新法)
下記観点から用語の統一を図った。
「取消」
民法制定時の用語
but 取消=意思表示の瑕疵を理由に法的効力を消滅させる
→ 平成16年改正により、「取消」→「撤回」
「解除」
意思表示の瑕疵を理由としないで契約の効力を消滅させる行為
→ 本改正では、この用語が使用された。
「撤回」
意思表示の瑕疵を理由としないで意思表示の効力を消滅させる行為
書面による贈与 | 書面によらない贈与 | |
---|---|---|
履行が未了 | 解除不可 | 解除可 |
履行が完了(終わった) | 解除不可 | 解除不可 |
1 書面によらない贈与契約の当事者(受贈者も可能だが、想定されているのは贈与者)は、履行が終わっていない部分を、自由に取り消すことができる。その趣旨は、次のとおりである。
① 贈与意思を明確化し、紛争を未然に予防する。
② 軽率な贈与の予防
2 判例
(1)書面による贈与を緩やかに認定する傾向にある。
・ 最判昭和37年4月26日
農地の所有権移転に関する許可申請書に移転原因として贈与と記載された事案で、書面による贈与に当たると認定した。
・ 最判昭和53年11月30日
当事者間で贈与する不動産について除外する旨記載された調停調書は、
① 贈与の意思表示自体が書面によってされたこと、書面が贈与の直接当事者間において作成され、この書面に贈与・類似文言が記載されていること ・・・ 不要
② 当事者の関与又は了解のもとに作成された書面 + 書面において贈与のあったことを確実に看守しうる程度の記載がされていれば足りる。
上記のとおり判示した上、当事者間で贈与する不動産について除外する旨記載された調停調書は、民法550条の書面に当たる。
・ 最判昭和60年11月29日
不動産買い受け、その不動産を贈与した者が(A → B=買主&贈与者 → C=受贈者)、未だ所有権移転登記を具備していなかった為、AからCに対する所有権移転登記(中間省略)をするよう求めたA宛ての内容証明郵便郵便を差し出した事案で、この書面は、民法550条の書面に当たる。
(2)離婚の財産分与は、単純な贈与に当たらないため、民法550条は適用されない(最判昭和27年5月6日)。
○ 民法551条(贈与者の引渡義務等)
1項 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。
2項 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
改正前の法551条
1項 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。
ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
2項 新551条2項と同じ。
1 売買契約の瑕疵担保責任の改正
① 契約責任説(債務不履行責任説)を採用
②「瑕疵」(旧法)→「契約の内容に適合しない」(新法)
2 1を受けて贈与契約についても改正
BUT 贈与=無償
→ 贈与の目的として特定した時点の状態で引き渡すこと
を約したものと推定
3 改正前の法では、法定責任説の立場からは、旧551条は特定物にしか適用されず、不特定物については一般の債務不履行の規定が適用されると解されていた。
4 新551条1項
① 贈与者の意思の推定
② 改正前の法では、不特定物贈与で瑕疵があった場合、特定が生じないと解されていた。
→ 不特定物贈与で破損していない物が贈与の対象である場合は、本項がそのまま適用されるのではなく、契約の内容に適合する物を引き渡す必要がある。
○ 民法552条(定期贈与)
定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。
○ 民法553条(負担付贈与)
負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
○ 民法554条(死因贈与)
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
1 死因贈与と遺贈の共通点・相違点
(1)共通点
自己の死後における財産処分に関する被相続人の終局処分
(2)相違点
① 死因贈与
契約 → 被相続人の死亡前、受贈者は契約上の地位を取得している。
② 遺贈
被相続人の死亡前、受遺者は何の権利も有しない(民法985条)。
遺贈の規定を「性質に反しない限り」、死因贈与に準用
→ 個別に検討する必要がある。
2 能力
① 死因贈与
意思能力&行為能力
② 遺贈
遺言能力 15歳~(民法961条)
民法5条、9条、13条、17条非適用(民法962条)
成年被後見人の遺言 民法973条、982条
3 要式性
① 死因贈与
贈与=諾成契約(口頭でも可) → 遺言の方式は準用されない。(最判昭和32年5月21日)
② 遺贈
遺言によりなされる → 遺言の方式(民法967条)
4 効力
① 死因贈与
ⅰ 贈与者・受贈者間で契約が成立 → 受遺者による遺贈の承認・放棄(民法98条6~989条)は適用されない。
ⅱ 被相続人の死亡時に効力発生(民法985条準用/最判昭和43年6月6日)
② 遺贈
ⅰ 単独行為 → 承認・放棄(民法968条)/包括遺贈の受遺者は相続人と同様である(民法990条)
ⅱ 被相続人の死亡時に効力発生(民法985条)
5 民法994条
① 死因贈与
準用について争いがある。
② 遺贈
○ 民法994条(受遺者の死亡による遺贈の失効)
1項遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2項 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
6 撤回
① 死因贈与
遺贈同様に、贈与者の最終意思を尊重する観点から、民法1022条が、その方式に関する部分を除いて、準用される(最判昭和47年5月25日)。
その結果、
ⅰ 書面による死因贈与でも、自由に撤回可
ⅱ 方式は準用されず、口頭でも可、黙示も可
民法1023条も準用される結果、先にされた死因贈与と矛盾する遺言(例えば、目的物が同一)がされた場合も、死因贈与は撤回されたものと取り扱われる。
負担付死因贈与で、受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合には、撤回がやむを得ないと認められる特段の事情が認められない限り、撤回は認められず、民法1022条・1023条は準用されない(最判昭和57年4月30日)。
② 遺言
○ 民法1022条(遺言の撤回)
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
○ 民法1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等)
1項 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2項 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
【参考・参照文献】
このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。
① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)264頁
② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)435頁
③ 平野裕之 債権各論Ⅰ契約法(2018年、日本評論社)129頁
④ 潮見佳男 基本講義債権各論Ⅰ 契約法・事務管理・不当利得(第3版)(2017年、新世社)117頁
⑤ 星野英一 民法概論Ⅳ(契約)(1986年、良書普及会)101頁