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債権法改正 債務不履行(2)損害賠償請求権

民法第3編 債権
第1章 総則
 第2節 債権の効力 

         第1款 債務不履行の責任等

〇 民法415条(債務不履行による損害賠償)(平成29年改正)

1項 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

 ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2項 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

旧415条(債務不履行による損害賠償)

 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

 債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

1 改正前の法

 債務者は、自己に帰責事由がないことを証明しない限り、履行遅滞・履行不能による損害賠償責任を負う。

2 改正法

(1)本条1項

 帰責事由の判断基準を「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念」と定めた。

(2)本条2項

 履行に代わる損害賠償(塡補賠償)請求権が発生する場合を定めた。

① 履行不能

② 旧法に規定していなかった「債務者が履行拒絶意思を明確に表示した場合」を、発生する場合とした。

 旧法下、日本の裁判例は、不能概念を拡張して対応してきたが、比較法的には、独自の債務不履行類型とする立法例が増加している(文献④144頁)。

③ 契約の解除

ⅰ 契約を解除した場合においても塡補賠償を認める。

 「履行利益の賠償」と「契約解除よる原状回復」が相容れないようにみえることから、明文で規定した(文献④145頁)。

ⅱ 債務不履行による契約解除権が発生した場合、解除権を行使していない場合にも、塡補賠償を認める。

 毎月給付されるような継続的契約で、ある月の給付が遅滞した場合、契約は解除せずに、当該月の債務の履行についてだけ損害賠償請求で処理する(文献④147頁)。

 

ⅲ 平成29年改正法に伴う考え方の転換(文献④146頁)

<従前>

 履行請求権 → 履行不能 → 損害賠償請求権(債務転移論)

 

<平成29年改正法>

① 解除権発生時で損害賠償請求権が行使可能が明文化され、債務転移論を否定した。

② 履行拒絶の場合も損害賠償請求権が発生することが明文化された。

<現在>

 履行請求権 ← [選択的] → 填補賠償請求権

 

 

〇 民法416条(損害賠償の範囲)(平成29年改正)

1項 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、

これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

2項 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

旧416条(損害賠償の範囲)

1項 新416条1項と同じ。

2項 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

1 通常損害

  新法は旧法と同じ考え方である。

2 特別損害

(1)予見の主体および予見の時期

① 予見の主体

旧法は「当事者」としていたが、考え方としては、文言どおり考える見解、「債務者」(判例)とする見解があった。新法は、「当事者」の文言は変更しなかった。

② 予見の時期

旧法において、考え方としては、「不履行時」とする見解(判例)、「契約締結時」とする見解があった。新法は、明文化を見送った。

③ 予見の対象

 旧法において、考え方としては、「事情」とする見解、「損害」とする見解があった。新法は、「事情」とした。

(2)予見のあり方予見可能性が規範的判断であることを考慮して、文言を改めた。

〇 法420条(賠償額の予定)(平成29年改正)

1項 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

2項 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。

3項 違約金は、賠償額の予定と推定する。

旧420条(賠償額の予定)

1項 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減すことができない。

2項 新420条2項と同じ。

3項 新420条3項と同じ。

1 旧法は、賠償額が予定されていた場合、裁判所は、その額を増減することができないと規定していたが、金額が過大な場、その部分を信義則等により無効とするのが裁判例の立場であった。新法は、この立場を採用した。

〇 民法418条(過失相殺)(平成29年改正)

 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、

裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

旧418条(過失相殺)

 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

 
 旧法で解釈上認められていた、損害の発生・拡大についての過失相殺を明文化した。

〇 民法422条(損害賠償による代位)

 債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価格の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。

〇 民法422条の2(代償請求権)(平成29年改正により新設)

 債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる。

1 旧法で明文規定を欠いていたが解釈上認められていた代償請求権を明文化した。

2 代償の例 第三者に対する損害賠償請求権・保険金請求権、保険金

経過措置 附則17条(債務不履行の責任等に関する経過措置)

1 施行日前に債務が生じた場合(施行日以後に債務が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。附則第二十五条第一項において同じ。)におけるその債務不履行の責任等については、新法第四百十二条第二項、第四百十二条の二から第四百十三条の二まで、第四百十五条、第四百十六条第二項、第四百十八条及び第四百二十二条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。

2 新法第四百十七条の二(新法第七百二十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定は、施行日前に生じた将来において取得すべき利益又は負担すべき費用についての損害賠償請求権については、適用しない。

3 施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率については、新法第四百十九条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

4 施行日前にされた旧法第四百二十条第一項に規定する損害賠償の額の予定に係る合意及び旧法第四百二十一条に規定する金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨の予定に係る合意については、なお従前の例による。

 

【参考・参照文献】

 このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。

① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)頁

② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)121頁

③ 平野裕之 債権総論(2017年、日本評論社)138頁

④ 内田貴 民法Ⅲ第4版 債権総論・担保物権(2020年、東京大学出版会)

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