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1 婚約の意義
婚約とは、婚姻(=結婚)予約のことであり、将来結婚しようという男女間に合意をいう。日本では、結婚について、届出により婚姻を成立させる法律婚主義(その中でも、届出婚主義)をとり結婚を保護しているが、結婚前の準備段階においても保護を受けるべき場合がある一方、準備段階で正当に離脱することを認めるべき場合がある。
婚約は、上記合意により成立し、結納(※)等特別な要式は不要である。
※ 結納
婚約が成立した場合、慣習上、当事者間において指輪等の贈答品や金銭が送られることとがある。これを結納という。判例(最高裁昭和39年9月4日判決)は、結納について、「婚約の成立を確証し、あわせて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚くする目的で授与される一種の贈与である。」とした。
→ 婚姻が成立しなかった場合、上記目的は達成されなかったので、授与者は相手方に対し返還を求めることができる。但し、授与者に婚約解消について責任がある場合、信義則上、返還を求めることができない場合もある。
2 婚約に対する法的保護
判例は、戦前(太平洋戦争前)、婚約と内縁とを包含する男女関係を保護する法理を確立した(大審院連合部婚姻予約有効判決・大正4年1月26日)。
そこでは、婚姻の予約は将来において適法な婚姻をなすべきことを目的とする契約であり有効である、正当な理由がないのに約束に反し婚姻を拒絶した場合には、債務不履行として損害賠償責任があるとの法理が示された。
戦後、最高裁(昭和38年9月5日)は、正当な理由のない婚約破棄には、不法行為責任を認めた。
3 婚約破棄の正当事由
問題は、どのような場合であれば婚約破棄に損害賠償責任が伴い、どのような場合であれ婚約破棄に正当理由があるとされるかである。
① 婚約は、内縁と異なり共同生活の実質を備えていない(要保護性が、内縁と比べて低い)。
② 婚姻の自由を保障する必要も考慮する必要がある。
③ 婚約後、結婚を前提に交際してみて初めて分かることもあり、また、不安に思っていたことがますます明らかになってきたりする。婚約後に、性格の不一致や、家族も含めた生き方・価値観の相違がはっきりしてきた場合には、自由に婚約を解消できるようにして、婚姻の自由を保障すべきである。(二宮141頁)
→ 婚姻解消の動機や方法等が公序良俗に反し、著しく不当性を帯びる場合に限り、婚約破棄に正当理由がなく損害賠償責任が発生すると解される。
4 婚約破棄に対する損害賠償の範囲
精神的損害に対する損害賠償(慰謝料)が中心である。
【参考参照文献】
○ 犬伏由子・石井美智子・常岡史子・松尾和子「親族・相続法(弘文堂NOMIKA)」(平成24年、弘文堂)105頁 ○ 二宮周平「家族法(第4版)」(2013年、新世社)141頁