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解雇権の制限

日本食塩製造事件
最高裁第2小法廷昭和50年4月25日判決

【事案】

 Xが勤務するY(会社)Xが所属する労働組合とはユニオンショップ協定(以下「ユシ協定」という。)を締結していた。YのXに対する懲戒解雇をめぐりXとYとの間で労使紛争が発生したが、その中で、労働組合はXを除名処分にした。これ受けて、Yはユシ協定に基づきXを解雇した。

 労働組合の除名処分が無効な場合、使用者のユシ協定に基づく解雇の効力が争点となった。

【裁判所の見解】

1 使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。

2 ユニオンショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化をはかろうとする制度であり、このような制度としの正当な機能を果たすものと認められるかぎりにおいてのみその効力を承認することができる。

① 労働者が正当な理由がないのに労働組合に加入しないために組合員たる資格を取得しない場合

② 労働者が労働組合から有効に脱退し若しくは除名されて組合員たる資格を喪失した場合

③ 労働者に対する除名処分が無効な場合

 

①②の場合、使用者は労働組合に対しユニオンショップ協定に基づく解雇義務を負う。

→ ユニオンショップ協定によって使用者に解雇義務が発生している限り、解雇は、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当なものとして是認することができる。

 

③の場合、使用者は労働組合に対しユニオンショップ協定に基づく解雇義務を負わない。

→ ユニオンショップ協定によって使用者に解雇義務が発生していないため、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当なものとして是認することはできず、他に解雇を裏付ける特段の事情がない限り、解雇権の濫用として無効となる。

4 除名が有効であるか無効であるかはユニオンショップ協定に基づく解雇に影響しないとし、本件解雇を有効とした原審判決を破棄し、差し戻した。

【参考文献】渡辺章・労基法講義(下)65頁

高知放送事件
最高裁第二小法廷昭和52年1月31日判決

 

【事案】

Xは、アナウンサーとしてY(放送会社)に勤務していたが、宿直勤務の際、2週間に2度寝過ごし、このため1度目はラジオニュースを全く放送できない事故となり、2度目は午前6時の提示ニュースを約5分間放送できない事故となった。このため、Yは、2度の寝過ごしによる放送事故及び2度目の事故について部長に求められるまで事故報告書を提出しなかったことを理由として、Xを解雇した。解雇の効力が争点となった。

【裁判所の見解】

1 Xの行為は、Yの就業規則に定める普通解雇事由に該当する。

2 普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、解雇は解雇権の濫用として無効となる。

3 Xはアナウンサーとしての責任感に欠けるが、

① 悪意、故意ではなく、過失であった。

② 通常先に起きてXを起こす同僚が寝過ごしており本人のみを責めるのは酷である。

③ 最初の寝過ごしを謝罪し、2度目の寝過ごしのときは起床後一刻も早くスタジオに入る努力をした。

④ いずれの事故もさほど長時間とはいえない。

⑤ Yも事故防止のため万全の策を講じていなかった。

⑥ 事故報告の内容のミスには無理からぬ誤解があった。

⑦ それまで勤務成績は悪くはなかった。

⑧ 一緒に寝過ごした担当者は軽い譴責処分であった。

⑨ 同種の事故で解雇された者は過去になかった。

→ 等の事情のもとにおいて、Xに対し解雇をもってのぞむことは、いささか苛酷にすぎ、合理性を欠くうらみなしとせず、必ずしも社会的な相当なものとして是認することはできないと考えられる余地がある。

4 本件解雇を解雇権の濫用として無効とした原審の判断は、正当と認められる。

【評釈】

① 解雇について客観的に合理的理由は認められるものの、社会通念上相当として是認することができるもの(相当性の要件)を欠くとした。

② 解雇を容易に認めない例である(土田)。

③ 解雇が過酷に失しないかを労働者に有利なあらゆる事情を考慮して判断した(菅野)。

④ 相当性の要件について、はなはだ微妙な総合判断が必要とされている(渡辺)。

 

【参考文献】

渡辺章・労働法講義(上)636頁、菅野和夫・労働法第11版補正版737,739頁、土田道夫・労働契約法第2版659頁

 

 

 

 

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