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1 平成30年(2018年)成立の働き方改革関連法は、パートタイム労働法を改正し、短時間労働者のほかに、有期雇用労働者を対象とし、法律の名称を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(略称:短時間・有期雇用者労働法)に改称した。
その際、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めた労働契約法20条は、短時間・有期雇用者労働法8条に統合された。
2 正規労働者・非正規労働者間の格差問題
① パートタイム有期雇用労働法
② 労働者派遣法
で規律されることになった。
平成5年に制定された短時間労働者の雇用管理の改善に関する法律(パートタイム労働法と略称されることがある)は、パートタイマー(有期雇用契約で女性労働者が多く占めるのが特徴である。)の雇用管理が正社員のそれと比べると曖昧なところがあり紛争又は紛争の元となったため、適正化するために制定された。この当時は、まだ、パートタイマーのイメージは、夫婦共働きの家庭で妻が家計を助けるために希望して短時間働く仕事で単純作業・機械的な仕事をするというものであった。ところが、その後、労働構造は、長引く不況を背景として、非正規雇用者が増加の一途をたどり、その中で、パートタイマーも、旧来の「女性・家計の助け・希望してパート」ばかりではなく、例えば、就職氷河期といわれた時期で希望としても正社員になれなかった人、転職が上手くゆかず、つなぎの仕事を思っていたパートの仕事をやむを得ず長期間続けることになった人、倒産・リストラで正社員を失職し不本意ながらパートをすることになった人、シングルマザー等、「性別問わず・家計を支える・希望してパートではなく、正社員の希望はあるが現実はパート」が増加した。これに対応して、パートタイム労働法は、その後の改正で、パートタイマーの雇用管理の適正化のみならず、均等待遇等も課題とするようになった。
第一章
パートタイム労働法が適用される「短時間労働者」とは、同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間と比べて短い労働者である。
パートタイマー、アルバイト、契約社員、嘱託、臨時工等その名称は問わない。
逆にこれらの名称を付されていた労働者であっても、「~通常の労働者の1週間の所定労働時間と比べて短い」の要件を充足しなければ、パートタイム労働法は適用されない。
第二章 短時間・有期雇用労働者対策基本方針
第三章 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等
第一節 雇用管理の改善等に関する措置
1項 パートタイマーも労働者であるから、使用者は労働基準法15条の労働条件明示義務を負うが、これに加えて、パートタイム労働法6条1項の特定事項の明示義務を負う。特定事項は、昇給、賞与、退職金の有無、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口である。明示方法であるが、文書の交付以外に、労働者が希望すればファクシミリ・電子メールによる送信でもよい。
2項 所定労働日以外の日の労働の有無、所定労働時間をこえて、または所定労働日以外の日に労働させる程度等が、文書による明示が推奨されている。
1 平成30年の最高裁(第二小法廷)判決
① 平成30年6月1日 ハマキョウレックス事件
② 平成30年6月1日 長澤運輸事件
①②の事件とも、運送会社の乗務員の労働条件について、「無期契約者」の条件と「無期契約者と同じ職務内容の有期契約者」の条件の格差が問題とされた。②は、定年後の再雇用された有期契約者と正社員との格差が問題とされた。
2 令和2年の最高裁判決
(③④:第三小法廷、⑤⑥⑦:第一小法廷)
③ 令和2年10月13日 大阪医科薬科大学事件
④ 令和2年10月13日 メトロコマース事件
⑤ 令和2年10月15日 日本郵便(佐賀)事件
⑥ 令和2年10月15日 日本郵便(大阪)事件
⑦ 令和2年10月15日 日本郵便(東京)事件
以上は、労働契約法旧20条に関するものであるが、短時間・有期雇用労働者法8条に当てはまる。
2 労働契約法20条の趣旨
① 有期契約労働者の労働条件
② 無期契約労働者の労働条件
①と② 相違があることを前提として、
a 職務の内容
業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度
b 当該職務の内容及び配置の変更の範囲
c その他の事情
を考慮して、不合理と認められるもの ×
→ 職務内容等の相違に応じた、均衡処遇を求める。
3 不合理性の判断
△ 賃金総額の比較
〇 問題となっている賃金項目の趣旨を個別に考慮する。
4 労働契約法20条違反の効果
① 私法上の効力(強行的効力)がある。
労働条件の相違=無効
② 有期労働者の労働条件が無期労働者の労働条件となる
わけではない(直律的効力の否定)。
□ 大内教授の分析(文献②)
① 労働契約法20条・短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条の解釈及び運用は、事案に応じて、個別的にならざるを得ない。
② 最高裁判所は、係争となった一つ一つの労働条件について、その労働条件の趣旨を考慮して、不合理性を判断する手法である。
③ 最高裁判所は、判決による解決のあり方として、均衡待遇を実現させること(例えば、正社員の6割を認める)を目指しているとはいえない。
「最高裁は、あくまで格差が不合理な場合に無効とするだけが裁判官に与えられた権限であり、基準が明確でない均衡待遇を認めて部分的救済をすることはできない(あるいは、すべきではない)と考えたのかもしれません。・・・(中略)・・・司法の介入ではなく、労使交渉によるとする考え方が示唆されています。」(文献②7~8頁)
④ 最高裁判所は、賞与・退職金の趣旨について、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保という「有為人材確保論」を肯定した。
【参考・参照文献】
① 桑村裕美子 時の問題 労働契約法旧20条の不合理性審査と令和2年最高裁5判決 法学教室486号57頁
② 大内伸哉 注目5判決をどう読む~法的な観点から~
同一労働同一賃金 最高裁5判決と企業対応(令和3年、日本法令)4頁
○ 第9条(不合理な待遇の禁止)事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。
1 パートタイム労働法8条と9条の沿革
平成19年改正のパートタイム労働法は、パートタイム労働者と通常の労働者との賃金を始めとする労働条件の格差問題について、① 職務内容の同一、②契約上又は実態上期間の定めのない雇用であり、③職務内容と配置の変更範囲が同一、の三要件を満たすパートタイマーについて、賃金等について、短時間労働者であることを理由とする差別的取扱いを禁止していた。
しかし、これでは、要件が厳格なあまり対象のパートタイマーの範囲が狭すぎ、パートタイマーと通常の労働者との労働条件の格差問題への対応としては不十分なものであった。
そこで、平成26年改正のパートタイム労働法は、上記三要件のうち②を除外し①③のみを要件とした上、まず、平成24年改正の労働契約法20条と同様の手法で、格差があることを前提として、その格差が不合理であってはならないとし(8条)、通常の労働者と同視すべきパートタイマーについては差別待遇を禁止した(9条)。
2 パートタイム労働法8条と9条の違い
○ 8条
パートタイマー:通常の労働者
両者の待遇の均衡を図る。
○ 9条
通常の労働者と同視すべきパートタイマー:通常の労働者 両者の待遇の均等を図る。
○ 8条は、9条~12条の総則的条文である。
3 9条が適用されないが8条の効果が期待される場面
パートタイマーも通常の労働者も職務内容は同じだが、通常の労働者のみ近隣の複数の事業所への配転が予定されている。
→ 9条は適用されない。
→ パートタイマーと通常の労働者との間の賃金格差が、配置の違いと釣り合わない程度に大きく、それを合理化とするその他の事情も認められない場合は、8条に違反すると解する(菅野356頁)。
4 効果
私法的効力が認められ、本条に違反するパートタイマーとの労働契約等の当該部分は違法無効であり、不法行為上違法となる。
〇 短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(平成30年12月28日厚労告430)
第二節 事業主等に対する国の援助等
四章 紛争の解決
第一節 紛争の解決の援助等
第二節 調停
第五章 雑則
【参考・参照文献】
下記文献を参考・参照して作成しました。
① 水町勇一郎・詳解労働法(2019年、東京大学出版会)339頁