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牧会活動事件

牧会(ぼっかい)活動事件

 【事案】

 日本キリスト教団尼崎教会牧師甲が、同教団龍野教会牧師乙と共謀して、全国的に頻発していた学園紛争が背景とするバリケード封鎖を企図して、昭和45年10月に県立尼崎高校で発生した、建造物侵入・凶器準備集合・暴力行為等処罰に関する法律及び窃盗事件の被疑者として警察による捜査対象者であったA、B(いずれも、同高校2年生で、17歳)をかくまったとして、犯人蔵匿罪で起訴された事件

【裁判所の判断】

<神戸簡易裁判所昭和50年2月20日判決(確定)(判例タイムズ318号219頁)>

無罪判決

① 事実

 AはCの子であり、Cは教会の信徒であり、AC母子は教会内の教育会館で居住し、甲は、父親がいなったAのために、進学等の保証人となったり、相談相手になっていた。BはAの友達であった。

 バリケード封鎖(高校への侵入が昭和45年10月18日)に失敗したABは現場から逃走し、甲は逃走中のABと面会した。ABは事件に関与したことを甲に告白したが、その発言から逃走するおそれがあったので、甲は、ABに反省を求めた後、牧師職にある者としてABの魂への配慮(牧会)ら、同人らの長い将来を誤らせないためには、まず暫くの間静かに労働しながら自己省察と深い思索をすることができる場所と機会を与えることが緊急に必要であると考えて、ABを尼崎におくことは過激グループとの接触等のおそれがあるため、乙に対し、事情を説明したうえ1週間預かってくれるよう依頼した。乙がこれを承諾したとを受けて、ABは、教団龍野教会に移動し、昼は仕事をし、夜は教会の会合に出席する等した。乙がABを指導した結果、ABは、自分たちの意識の浅薄さに気づき始めた。

 その後、ABは、昭和45年10月29日、所轄の尼崎中央署に任意で出頭した。なお、ABは、事件について、昭和46年3月1日神戸家庭裁判所尼崎支部で不処分の決定を受けた。また、退学処分も考えられたところてあるが、甲の高校に対する強力な働きかけもあり復学し、その後、大学に進学した。

② 評価

  甲の行為が犯人蔵匿罪の構成要件に当たるとしても、正当業務行為として違法性を阻却する。

 甲のした牧会活動は、キリスト教牧師の職として公認されており、その目的は魂への配慮を通じて社会へ奉仕することにあり、業務そのものは正当である。

 牧会活動は、実質的には、憲法20条の信教の自由のうち礼拝の一内容(即ちキリスト教における福音的信仰の一部)をなす。内面的な信仰と異なり外面的行為でもある牧会活動が、公共の福祉による制約を受けるが、制約は結果的に内面的信仰の自由を事実上侵害するおそれがあるので、制約は最大限に慎重な配慮を必要とする

 本件の牧会活動が目的において相当な範囲内にとどまったか否かは、それが専ら自己を頼って来た個人の魂への配慮としてなされたものであるか否かによって決すべきものであり、その手段方法の相当性は、上記憲法上の要請を踏まえた上で、その行為の性質上必要と認められる学問上慣習上の諸条件を遵守し、かつ相当性の範囲を超えなかった否か、それらのためには法益の均衡、行為の緊急性及び補充性などの諸事情を比較検討することによって、具体的綜合的に判定すべきでものである。

 ①の事実を踏まえて評価した結果、

 甲の本件所為は、全体としての法秩序に違反せず、正当な業務行為として罪とならない

【評釈等】

① 簡易裁判所の判決が憲法判例とになることが少ないが、本判決は、信教の自由に踏み込んで実質的に正当行為と判断した判決であり、憲法学において高く評価されている。例えば、「刑法上の規制であっても、問題の行為の深い宗教的な性質を配慮して、信教の自由を保護しようとした事例として注目される。」(佐藤幸治・日本国憲法論228頁)。

② 判例タイムズの評者は、本件において甲の行為が捜査への支障がさほどでもなかったが考慮されており、無罪判決は本件事実関係において理解すべきであると注意を喚起している。

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