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宇奈月温泉事件

宇奈月温泉事件

大審院昭和10年10月5日判決

たいへん古い判例で、法学部の皆さんは、法学入門、民法総則、物権法の講義で学ぶことになる判例と思います。

【事案】

 宇奈月温泉は、黒部鉄道株式会社が他の温泉から引湯管により湯を引いて宇奈月村に開設したものである。その引湯管が他人の土地(傾斜地で使用不能)の一部(2坪)を通っていた。その他人から土地を譲り受けた者(X)がYに対し、当該土地及び同土地に隣接するX所有地を高値(時価の20倍超)で買い取るよう請求した。Yがこれを拒否すると、XはYを被告として、X所有地を通っている管を撤去するよう求めて訴えを提起した。管の撤去には多額の費用と多数日の休業が必要であった。

【裁判所の判断】

Xの撤去請求を認めなかった。

所有権に対する侵害又はその危険の存する以上所有者はかかる状態を除去又は禁止させるため、裁判上の保護を請求することができることはもちろんであるが、当該侵害による損失がいうに足らず、しかも侵害の除去著しく困難であり、たとえこれができるとしても莫大な費用を要する場合において、第三者にしてかかる事実するを奇貨として不当なる利得を図り、殊更侵害に関係ある物件を買収した上、一面において侵害者に対し侵害の除去を迫り、他面において当該物件その他の自己所有物件を不相当に巨額な代金をもって買取りを請求し、他の一切の協調に応じないと主張するが如きにおいては、当該除去請求は単に所有権の行使たる外形を構うるに止まり、真に権利を救済せんとするにあらず。このような行為は全体において専ら不当な利益の獲得を目的とし、所有権をもってその具に供するに帰するものならば、社会観念上所有権の目的に違背し、その機能として許されるべき範囲を逸脱するものにして、権利の濫用に外ならず。

【評釈等】

① 戦後、昭和22年の法改正により、「権利の濫用は、これを許さない。」(民法1条3項)が追加された。

② この判例は、権利の濫用に当たるか否かについて、権利行使者の悪意・害意(主観的要件)当事者双方の利益衡量(本件では、Xの損害は使用不能の土地であるため小さい、Yにとって所有権侵害を回避するためには多額の費用と多数日の休業が必要)により判断した。その後の判例は、主観的要件を重視しないで、客観面すなわち当事者双方の利益衡量により判断している。

③ XのYに対する妨害排除請求が認められなくても、YはXに対し土地の使用利益を不当利得として返還する義務がある(内田貴・民法Ⅰ(総則・物権総論)初版(1994年・東京大学出版会)419頁)。

④ 権利濫用法理は、労働法分野において大きな役割を果たした。使用者の解雇権の行使も客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には権利の濫用として無効となる(日本食塩製造事件についての最高裁昭和50年4月25日)。この解雇権濫用法理は、労働契約法(平成20年3月1日施行)16条(解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。)により成文化された。

⑤ 権利濫用の「濫用」となってはいけない(=権利濫用法理を使用し過ぎることの戒め)(道垣内弘人・リーガルベイシス民法入門(2014年・日本経済新聞出版社)123頁)

【参考・参照文献】

近江幸治・民法総則第5版22頁、我妻・有泉コンメンタール民法第1版(2005年・日本評論社)51頁

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