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桃中軒雲右衛門浪曲レコード複製事件

大審院第3刑事部大正3年7月4日判決

たいへん古い判例で、法学部の皆さんは、不法行為法の講義で学ぶことになる判例と思います。

 桃中軒雲右衛門(1873-1916、)という浪花節の第一人者であつた者が吹き込んだ浪曲のレコード(商品名は象印音譜)5枚を買い入れた者が、この原盤から1860枚の複製盤を作成し、販売した事件です。原盤を販売した三光堂が著作権法違反で告訴し刑事事件となり、それにあわせて、雲右衛門から著作権を譲り受けた者が附帯私訴で損害賠償請求した事件です。

 裁判所は、著作権法違反を認めず、被告訴人は無罪となり、損害賠償も認められなかった。

要旨

(1)たとえ正義の観念に反する行為でも権利の侵害とならなければ不法行為ではない。

(2)著作権の判断

① 音楽的著作も著作権法1条1項(当時)の「美術の範囲に属する著作物」に含まれる。楽譜→演奏の順の場合、著作権は楽譜の作成時に発生し、演奏が先行する場合、著作権は演奏により発生する。

② 著作権法29条(当時)の偽作となるには、演奏された音楽が著作物として保護を受けるべきものであることを要する。そのため、その音楽が先人未発の新たなる旋律を含むことが必要条件となる。我国特有の音楽に見られる如く楽譜を用いずして新曲を創作する場合、その作曲家が著作権を取得するためには、旋律が一種の定型を成して反復できる可能性を有する程度に熟したることを必要とし、演奏と共に消滅に帰し演奏者の脳裡に於いてその定型を遺留せざるものは音楽著作者として法律の保護を受けることができない。即興的音楽の演奏にして純然たる瞬間的創作に属するものは、…音楽的著作物として著作権法の保護を受けることができない。

 

 その他、判決の中の「浪花節の如き比較的音階曲節に乏しい低級音楽」というフレーズはあまりに有名です。判決の浪曲についての考え(是非はさておき)が現れています。判決によると、浪花節の演奏者の多くは、観客の興味を引くために多少音階曲節を変化させ、アドリブ的要素を含むものとし、このような瞬間創作に対し一一著作権を認めることは著作権法の精神ではないとした。

 

  この判決の歴史的意義は次のとおりとされています。

① 本判決は、○○権の侵害といえなければ、不法行為は成立しないと解した。その後、判例は、大学湯事件(大審院大正14年11月28日判決)において、この要件を緩和し、営業利益の侵害によっても不法行為の成立が認められるとした。「権利侵害」から「違法性」へというスローガンで語られる

② ただ乗りを容認したという意味で悪評がある。

③ 著作権法の改正へつながった。

【評釈等】

 浪花節に著作権が成立しないという前提そのものが大いに問題であるが、かりに「低級音楽」たる浪花節に定型的旋律がなく著作権が成立しないとしても、それをレコードに吹き込んだ以上、その旋律は固定的なものとなり、それは著作権の対象となると思われる(加藤一郎・法律学全集不法行為(初版)32頁)。

【参考、参照文献】

大村敦志・法学教室349号74頁、同350号72頁

 

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