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賃借人の自殺と損害賠償

賃借人の自殺と損害賠償責任(1)

 賃借人(建物賃借人を想定します)がが物件内で自殺した場合、その相続人は賃貸人に損害賠償責任を負うと解されています。

 自殺に至った事情は様々でありますが、自殺は嫌悪されるというのが実情と思います。このような実情を踏まえて、賃借人が自殺した場合、賃貸人は一定期間当該物件を賃貸することができなくなったり、賃貸するとしても、賃料を大幅に減額せざるを得ないと思います。

 法的には、賃借人は賃貸借契約期間中物件を善良な管理者の注意義務(民法400条)をもって保管する義務を負うところ、自殺することは保管義務に違反する行為といえ、賃貸人に対する損害賠償責任が発生します。裁判例の一般的な見解もそうであるといえます。一例として、下記裁判例を紹介します。

<東京地方裁判所平成22年9月2日判決(D1-Law.com判例ID28163555)>

【事案】(標記論点に関する部分に限定しています)

平成20年3月31日 

賃貸人X→賃借人Y 建物賃貸借契約(賃料1か月126,00円。物件[平成20年3月3日新築]を第三者に転貸することは禁止されている。)

平成20年4月

Y→A 賃貸人Xの承諾を得ることなく、物件を転貸した。

平成21年6月24日頃

転借人Aは物件の浴室内で自殺した。

平成21年7月1日

転借人Aの遺体がAの友人により発見された。

平成21年8月4日

XYが本件賃貸借契約を解除した。

平成21年9月17日

Xは、原状回復後の本件物件を、本件物件の管理受託会社の従業員に対し賃貸したが、賃料は1か月50,000円であった。

 

XがYに対し、(未払賃料のほか)債務不履行に基づく損害賠償請求として、原状回復費用及び賃料減額(126,000円→50,000円)相当額の損害の賠償を求めた。

【裁判所の判断】

 賃借人又は賃借人が転貸等により居住された第三者が目的物である建物内において自殺をすれば、通常人であれば当該物件の利用につき心理的な嫌悪感ないし嫌忌感を生じること、このため、かかる事情が知られれば、当該物件につき賃借人となる者が一定期間現れず、また、そのような者が現れたとしても、本来設定し得たであろう賃料額より相当低額でなければ賃貸できないことは、経験則上明らかといってよい。

 また、特に賃借人が無断転貸等賃貸人の承諾なく第三者を当該物件に居住させていたような場合、賃貸人に対し居住者の自殺といった事態の生じないよう配慮すべきことを求めたとしても、必ずしも過重な負担を強いるものとはいえない。

 賃借人は、賃貸借契約上、目的物の引渡しを受けてからこれを返還するまでの間、善良な管理者の注意をもって使用収益すべき義務を負うところ、少なくとも無断転貸等を伴う建物賃貸借においては、上記の点にかんがみると、その内容として、目的物を物理的に損傷等することのないようすべきにとどまらず、居住者が当該物件内部において自殺しないよう配慮することもその内容に含まれると見るのが相当である。

 以上を踏まえて、裁判所は、下記のとおり損害を認めた。

(1)本件物件の原状回復費用

   944,475円

(2)一定期間賃貸できない損害・賃料を通常よりも低額に設定せざるを得ないことによる損害

 本件物件を賃貸するに当たっては、宅地建物取引業法により、宅地建物取引業者は賃借希望者に対しAの自殺という事情の存在を告知すべき義務を負うと見られる。そうである以上、告知の結果本件物件を第三者に賃貸し得ないことによる賃料相当額、及び賃貸し得たとしても、本来であれば設定し得たであろう賃料額と実際に設定された賃料額との差額相当額も、逸失利益として、Yの債務不履行と相当因果関係のある損害ということができる。

 自殺という事情に対し通常人が抱く心理的嫌悪感又は嫌忌感(は、)時間の経過と共に自ずと減少し、やがて消滅するものであることは明らかである。

① 賃貸不能期間を1年間する。

② その後2年間は、本来の賃料126,000円の半額63,000円でないと賃貸し得ない期間とする。

①②及び中間利息考慮して、2,778,752円を損害と認める。

賃借人の自殺と損害賠償責任(2)

賃貸中の建物及び敷地の売買契約がなされた当事者間において、契約後引渡しまでの間に賃借人が自殺した事件について、買主から売主に対する価値減少分の金員返還請求が認められた例を紹介しました。

<横浜地方裁判所平成22年1月28日判決(判例タイムズ1336号183頁)

【事案】(標記論点に関する部分に限定しています)

平成19年1月18日 

賃貸人Y→賃借人A 本件建物(平成18年11月30日新築、○○セ駅から北西1.1km、徒歩約15分の2階建て共同住宅)の201号室(本件居室)を期間2年間、賃料月額7万円・共益費月額2000円の約定で賃貸した。

平成20年1月27日

売主Y→買主X 本件建物及びその敷地たる土地(本件土地)を、8680万円で売却した。売買契約書には「引き渡し前に火災、地震等の不可抗力により滅失又は毀損した場合は、その損失は売主の負担とする。」との約定があった。

平成20年2月13日

賃借人Aは、本件居室内において、物干し用ロープをロフトの梯子にかけて首を吊り、自殺した。

平成20年2月18

・ 買主X→売主X 売買代金全額を支払った。

・ 売主X→買主Y 本件土地建物を引き渡し、所有権移転登記手続をした。

その後

買主X→売主Y 賃借人Aの自殺による物件の価値減少分の損失の支払いを請求した。Yがこれを拒否したため、Xは提訴した。

 

【裁判所の判断】

① 本件自殺は、本件建物に対して、通常人であれば心理的に嫌悪すべき事由を付加するものであって、本件建物に対する有効需要はこのような心理的瑕疵によって減少することになる。そして、かかる心理的瑕疵は、本件自殺と同時に本件建物に付加され、毀損として生じると解するのが相当である。

② 本件売買契約書の「毀損」には、本件自殺のような本件土地建物の品質や交換価値を減少させる場合を含むと解するのが相当である。

①②より、Aの自殺による物件の価値減少による損失は、売主Yの負担となる。

③ 本件土地建物の交換価値の減少は381万0520円であり、同額から塡補に当たる57万円を控除した、324万0520円をYに支払うよう命じる。

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