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1 養子の意義
自然的親子関係のない者の間に法律上の親子関係を作り出すことを目的とした制度(文献②596頁)
2 養子の種類
普通養子
特別養子
〇 民法792条(養親となる者の年齢)
二十歳に達した者は、養子をすることができる。
1 養子縁組制度の意義
養子縁組は、法律的な(擬制的な)親子関係を創設させる制度である。
2 養子縁組の種類
① 普通養子
ⅰ 目的は限定されない。
ⅱ 法律上の要件 緩やか
ⅲ 成立要件
(原則)養子となる者の養親となる者の合意
+ 戸籍法に従って届出
② 特別養子
ⅰ 実親による監護が困難な子の保護が目的
ⅱ 法律上の要件 厳格
ⅲ 裁判所の審判によって、縁組が成立
3 本条は、20歳以上であれば、養親となることができる旨定めた規定である。
4 本条違反の縁組の取消し → 804条
5 普通養子縁組の成立要件
(1)縁組の届出
民法799条→<準用>→民法739条[婚姻の届出]
戸籍法66条
(2)縁組の意思
形式的意思説
縁組の届出をする意思
実質的意思説(判例)
真に養親子関係の設定を欲する効果意思
(最判昭和23年12月23日)
節税養子→【論点】相続税を節税するための養子縁組
【論点】相続税を節税するための養子縁組
[事案]Aは、長男B、その妻C及び税理士から、BC夫婦の長男YをAの養子にすると、相続税の基礎控除額が増えるため節税効果があるとの説明を受け、その後、A及びYは、平成24年5月、役場に養子縁組届を提出した。翌平成25年、Aは死亡した。その後、Aの長女及び二女は、上記養子縁組は縁組をする意思を欠くもので無効であると主張した。
〇 最高裁判所第三小法廷平成29年1月31日判決
(評釈・解説)
判例タイムズ1435号95頁、法学教室441号123頁
養子縁組は、嫡出親子関係を創設するものであり、養子は養親の相続人となるところ、養子縁組をすることによる相続税の節税効果は、相続人の数が増加することに伴い、遺産に係る基礎控除額が相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。
相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。
したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。
[コメント]
① 養子縁組の現実の使われ方を尊重したものであり、結論は正当である。この判例を前提としても、相続税の負担軽減のための便法として縁組を仮想した場合には、縁組は無効となるものと思われると後記判例タイムズの論者は評するが、有効な節税養子と無効な節税養子との区別は現実問題不可能ないし難しいと思われる。
② 判例を前提とすると、主に孫養子の方法で行われる節税養子において、縁組意思が否定される事例はほとんどないといえる(文献①171頁)。
法律的とはいえ親子関係を創設するため、それに相応しくない尊属養子・年長者養子を禁止する趣旨である。
① 直系尊属(親、祖父母)及び傍系尊属(おじ、おば)を養子することができない。
② 1日で早く生まれた者は1日でも遅く生まれた者を養子とすることはできるが、その逆は禁止される。なお、同日生まれの者は養子とすることができない。
③ 実の兄が実の弟を養子とすることはできる。
④ 年少の従兄弟を養子とすることはできる。
⑤ 自己の直系卑属(子、孫)を養子とすることはできる。嫡出の身分取得や親権の点において実益があるため。この趣旨より、自己の嫡出子を養子とすることは否定される。
⑥ 配偶者の直系卑属を養子することができる(連れ子養子)。
〇 民法794条(後見人が被後見人を養子とする縁組)
後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様とする。
被後見人の財産管理を仕事とする後見人が縁組により後見人の横領等不正行為を隠蔽することを防止し、被後見人の利益を保護する趣旨
未成年者を養子とする場合の縁組の許可(民法798条)とは別である。
1 未成年養子における夫婦共同縁組
普通養子において、配偶者のある者が未成年者を養子にする場合、夫婦共同縁組をしなければならないとし、単独縁組(原則)の例外を定めたものである。
2 適用除外
① 配偶者の嫡出である子を養子とする場合
② 配偶者がその意思を表示することができない場合
〇 民法796条(配偶者のある者の縁組)
配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。
ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
1 「単独縁組」と「他方配偶者の同意」の組合せ
他方配偶者の同意の意義
単独縁組 → 他方配偶者にとっては親族関係・相続・氏・扶養という局面において利害が絡む。(文献②597頁)
2 適用除外
① 配偶者とともに縁組をする場合
夫婦共同縁組の形態となる。
② 配偶者がその意思を表示することができない場合
〇 民法797条(十五歳未満の者を養子とする縁組)
1項 養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2項 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。
1 未成年者のうち15歳未満の者が養子になる場合
たとえその者に意思能力があったとしても、法定代理人(親権者・後見人)による代諾縁組となる。
2 未成年者のうち15歳以上の者が養子になる場合
意思能力を有しておれば、法定代理人(親権者・後見人)の同意なしに、養子縁組できる。
1 戦前にみられた、子の利益に反する養子(例:芸妓養子)の発生を防止し、子のための養子法に転換する意義を有する。
2 裁判所の審判
家事事件手続法39条、別表第1[61項]
〇 民法799条(婚姻の規定の準用)
第738条及び第739条の規定は、縁組について準用する。
☆ 準用される法文
☆ 民法738条(成年被後見人の婚姻)
成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。
☆ 民法739条(婚姻の届出)
1項 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2項 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
1 届出主義
戸籍法66条、創設的届出
2 適法な届出を欠く場合において、無効行為の転換理論に基づき、養子縁組届に転換できるか。
① 虚偽の嫡出子出生届(藁の上からの養子)
文献①167頁の【事例25】
他人の子を養子とする意図で嫡出子出生届がされたされた場合
A:Bを父Cを母として、BCの嫡出子として届け出られた。AB間、AC間に親子関係がない。
D:Aの実子
その後、AB死亡
その後、Dが、AB間、AC間に親子関係がないことの確認を求めて提訴
判例(最判昭和25年12月28日、最判昭和50年4月8日)は、養子縁組が戸籍法の届出によって法律上の効力が生じる要式行為であることから、養子縁組届への転換を認めない。
長年、親子としての生活実体が認められる場合は、当該親子関係の不存在確認請求が権利濫用となる余地はある(最判平成18年7月7日)。
② 虚偽の認知届と養親縁組
文献①168頁の【事例26】
判例(最判昭和54年11月2日)は、認知届(無効)の養子縁組届への転換を否定する。
3 届出を欠く場合、養子縁組は成立しないが、一定の法的保護が与えられる場合がある。借地借家法36条は、その一例である。
〇 民法800条(縁組の届出の受理)
縁組の届出は、その縁組が第792条から前条までの規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
1 養子縁組の無効事由
① 本条1号 縁組の意思を欠く場合
② 本条2号 縁組の届出がない場合
この場合は、縁組は成立しない。
2 本条1号の無効の主張
人事訴訟法2条3号 縁組無効の訴え
法的性質 判例 当然無効説、他の訴訟の前提問題として縁組無効の主張・判断ができる。
〇 民法803条(縁組の取消し)
縁組は、次条から第808条までの規定によらなければ、取り消すことができない。
1 民法792条違反の縁組の届出が誤って受理された場合を想定している(文献①172頁)。
2 取消し
① 取消権者
ⅰ 養親 ⅱ 養親の法定代理人
② 取消権の消滅
養親が20歳に達した後、ⅰまたはⅱ
ⅰ 6か月を経過 ⅱ 養親が追認
〇 民法807条(養子が未成年者である場合の無許可縁組の取消し)
第798条の規定に違反した縁組は、養子、その実方の親族又は養子に代わって縁組の承諾をした者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
ただし、養子が、成年に達した後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
〇 民法809条(嫡出子の身分の取得)
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
1 基礎知識
① 「養親の血族」と「養子」との間
親族関係が発生する。民法727条
② 「養親」と「養子の血族」との間
親族関係は発生しない。
③ 養親・養子間 相互に扶養義務 民法877条1項
④ 養子・実親間 実親子関係は消滅しない。
→親族関係・扶養義務・相続は、縁組前のとおりである。
〇 民法810条(養子の氏)
養子は、養親の氏を称する。
ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。
〇 民法811条(協議上の離縁等)
1項 縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
2項 養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
3項 前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
4項 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項の父若しくは母又は養親の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
5項 第二項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求によって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
6項 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
1 死後離縁について
養子縁組の一方当事者が死亡した後、生存当事者は、家庭裁判所の許可を得て、離縁することできます(民法811条6項)。
2 手続等
(1)申立人の住所地を管轄する家庭裁判所にその旨の審判を申し立てる必要があります。そして、審判確定後、裁判所の審判書謄本と確定証明書を添付して、役場に届け出る必要があります。
(2)養子が養親と死後離縁をした場合でも相続関係には影響しません(最高裁判所のホームページに明記されている。)。相続人であることに変わりありません。
3 裁判所の判断
裁判所は、離縁の意思が真意であり、恣意的・濫用的な離縁でなければ、これを認めます。ここに恣意的・濫用的な離縁とは、養子が養親の相続について多額の遺産を相続しながら、離縁によって養親の親族の扶養義務を免れようとする場合が例として挙げられています。
① 福岡高等裁判所平成11年9月3日決定(D1-Law.com判例ID28050496)
本件養子縁組は<1>養親の老後の世話、<2>家業の引継ぎ、<3>財産の相続を主たる目的としていたが、養子が養親より先に死亡したことによってその目的がほとんど達成することができなくなったこと、養子の子にこれらを期待することができないこと(※1)、本件縁組によって養子のみが一方的に不利益を受けたわけではないこと(※2、3)を考慮して、長崎家庭裁判所島原支部の原決定を覆し、離縁を許可した。
※1 養子の生存中、養子の妻及び子と養親とが疎遠な関係であったことが認定されている。
※2 養親は養子のために敷地を無償で使用させ家を新築してあげた。
※3 養子の子が死後離縁が認められれば、将来養親が死亡した場合、自分達が代襲相続できなくなると主張したが、それだけが保護されるべきであるとの見解は採用できないとした。
〇 民法811条の2(夫婦である養親と未成年者との離縁)
養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦が共にしなければならない。
ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。
〇 民法817条(離縁による復氏の際の権利の承継)
第七百六十九条の規定は、離縁について準用する。
〇 民法817条の2(特別養子縁組の成立)
1項 家庭裁判所は、次条から第八百十七条の七までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
2項 前項に規定する請求をするには、第七百九十四条又は第七百九十八条の許可を得ることを要しない。
〇 民法817条の3(養親の夫婦共同縁組)
1項 養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。
2項 夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。
〇 民法817条の4(養親となる者の年齢)
25歳に達しない者は、養親となることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が25歳に達していない場合においても、その者が20歳に達しているときは、この限りでない。
〇 民法817条の5(養子となる者の年齢)
1項 第817条の2に規定する請求の時に15歳に達している者は、養子となることができない。特別養子縁組が成立するまでに18歳に達した者についても、同様とする。
2項 前項前段の規定は、養子となる者が15歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合において、15歳に達するまでに第817条の2に規定する請求がされなかったことについてやむを得ない事由があるときは、適用しない。
3項 養子となる者が15歳に達している場合においては、特別養子縁組の成立には、その者の同意がなければならない。
〇 民法817条の6(父母の同意)
特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。
〇 民法817条の7(子の利益のための特別の必要性)
特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。
〇 民法817条の8(監護の状況)
1項 特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を6箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
2項 前項の期間は、第817条の2に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。
〇 民法817条の9(実方との親族関係の終了)
養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。ただし、第817条の3第2項ただし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。
〇 民法817条の10(特別養子縁組の離縁)
1項 次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
一 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
二 実父母が相当の監護をすることができること。
2項 離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。
〇 民法817条の11(離縁による実方との親族関係の回復)
養子と実父母及びその血族との間においては、離縁の日から、特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。
【参考、参照文献】
以下の文献を参考、参照して作成しました。
① 常岡史子 家族法(2020年、新世社)165頁
② 潮見佳男 民法(全)第3版(2022年、有斐閣)596頁