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親子法 嫡出子

民法第4編 親族
第3章 親子
第1節 実子

〇 民法772条(嫡出の推定)

1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

2項 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

第1 嫡出子推定の意義(文献③44頁)

 

[意義]婚姻関係を基礎とし、父子関係を推定する。

     子の懐胎時における母の婚姻

    母の夫を法律上の父と推定する。

[機能]子と父との遺伝的なつながりの有無を確認する(DNA鑑定)ことなく、早期に父子関係を確定し、子の地位の安定を図る。

 

なお、母子関係は、分娩という事実により確定できる。   

第2 推定が及ぶ嫡出子、推定されない嫡出子、推定の及ばない嫡出子

 嫡出子とは、婚姻関係にある男女間の子である(我妻栄)。

 甲:夫 乙:妻 A:乙が分娩した出生子 丙:血縁上のAの父

1 推定が及ぶ嫡出子

(1)民法772条により推定される嫡出子

  2段階の推定、経験則に基づく法律上の事実推定規定

 

  ① 父性推定

    妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定する。

  ② 懐胎期間推定

 婚姻成立日から200日を経過した後又は婚姻の解 消日・婚姻取消し日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

 

※ 婚姻解消・婚姻取消し後300日以内に出生した子

 前夫の子と推定されるが、[婚姻関係終了後に][他の男性との間に子を懐胎したこと]が医師による「懐胎時期に関する証明書」により証明されるのであれば、民法772条の推定が及ばず、母の非嫡出子又は後婚の夫を父とする嫡出子出生届出が可能である。・・・法務省通達による平成19年5月21日以後の取扱い

(2)父子関係を否定するための訴訟

  嫡出否認の訴え

  ① 夫のみが提起できる。

  ② 提訴期間

    夫が子の出生を知った時から1年以内

    夫が成年被後見人である場合における起算点の特則

    → 778条

  ③ 形成訴訟

  ④ 認容判決の場合

    父子関係は子の出生に遡って存在しなかったことに

   なる。

  ⑤ 対世効 人事訴訟法24条1項

 

2 推定されない嫡出子

(1)民法772条により推定されない嫡出子

  (例)婚姻成立から200日以内に出生した子

  

  婚姻前の懐胎であると推定できるため嫡出推定は及ばない

 が、結果的には嫡出子として扱うのが適当である。

(2)親子関係を否定するための訴訟

  親子関係不存在確認の訴え

  ① 確認の利益があれば、第三者でも提起できる。

  

3 推定の及ばない嫡出子

  民法772条の期間内に出生したため形式的には同条の

 嫡出推定が及ぶが、実質を考慮して嫡出推定を及ばない

 嫡出子とみなす。

 

第3 推定の及ばない(嫡出)子(推定を受けない(嫡出)子)

1 いかなる場合を推定の及ばない嫡出子とみなすか争いがあるが、判例(最高裁第一小法廷昭和44年5月29日判決)は、妻が夫との間で性的関係を持つ外観がないことが明らかであることを要するとする(外観説)。

 判例が、上記外観に当たるとする事情は次のとおりである。

  懐胎時期において  

① 夫が出征、在監、外国滞在中であるとき

② 夫が失踪宣告を受け、失踪中とされているとき

③ 事実上の離婚が成立していたとき

 

2 推定の及ばない嫡出子は、父からの嫡出否認を待つことなく、生物学上の父に対し認知請求できる(上記最判)。

3 嫡出推定を受ける子、嫡出推定により父とされる者、生物学上の父の合意があるのであれば、親子関係不存在確認(認知)の調停手続においてDNA鑑定等の手続を経て、合意に相当する審判(家事事件手続法277条)により、嫡出推定を受ける子と嫡出推定により父とされる者との間の親子関係を否定することができる。

○ 民法772条(嫡出の推定)【令和4年改正法】

1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。

2項 前項の場合において、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

3項 第一項の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に二以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。

4項 前三項の規定により父が定められた子について、第七百七十四条の規定によりその父の嫡出であることが否認された場合における前項の規定の適用については、同項中「直近の婚姻」とあるのは、「直近の婚姻(第七百七十四条の規定により子がその嫡出であることが否認された夫との間の婚姻を除く。)」とする。

 

◇ 令和4年改正法によるルール(文献③45頁)

1 婚姻中懐胎の推定ルール

(旧772条1項・新772条1項前段)

① 根拠

 夫婦の同居義務・貞操義務

→ 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子である蓋然性が難い。

 夫婦の協力・扶助義務に照らせば、夫婦による子の養育が期待できる。

② 推定1

  出生時期が下記に当たる。

・ 婚姻成立日から200日経過後

・ 婚姻解消・取消し日から300日以内

③ 推定2

  当該夫婦の夫の子と推定

2 婚姻前懐胎・婚姻後出生の推定ルール

(新772条1項後段)

 旧法下の「推定されない嫡出子」は、これにより、嫡出推定が及ぶ。

① 根拠

 かかる場合、夫の子である蓋然性が高い

 女性が妊娠した後に婚姻する夫婦が増加しているという社会の変化等 → 女性が懐胎していることを認識した上で婚姻する夫は、生まれた子を自らの子として養育していく意思を有している有しているのが通常

② 推定1

  出生:婚姻成立日から200日以内

  → 婚姻前の懐胎

③ 推定2

  婚姻前に懐胎・婚姻成立後に出生

  → 当該婚姻における夫の子

3 複数回の婚姻と父性推定の重複

(1)<事案> 

 母が前夫Aとの婚姻中に子を懐胎するが離婚

 その後、Bと再婚するも離婚

 その後、Cと再婚した後、子を出産

 

 Aの子とする推定 772条1項前段

 Bの子とする推定 772条1項後段

 Cの子とする推定 772条1項後

 

 婚姻解消日から300日以内に生まれた子であっても、母の再婚後に生まれた子は再婚後の夫の子推定することとした。

これとの整合性で、

子の出生の直近の婚姻における夫Cの子と推定する(772条3項)。

 複数の婚姻により複数の父性推定が重複する場合は、父子関係が存在す蓋然性が相対的に高い、子の出生の直近の婚姻を基準とする推定ルールを新設したものといえ、772条1項前段の例外といえる。

<根拠>

・ 婚姻解消日から300日以内に生まれた子であっても、母の再婚後に生まれた子は再婚後の夫の子推定することとした。

これとの整合性

・ 子の出生の直近の婚姻における夫は、懐胎中の女性と婚姻し、その後に子が出生していることからすると、当該夫の子である蓋然性が高い。

・ 夫婦の協力・扶助義務→夫婦による子の養育が期待できる。

(2)772条4項は、(1)を前提として、<事案>で、Cが子の父であることが否認されれば、Bが子の父であると推定されるように、嫡出否認された場合における推定ルールを新設した。

 

〇 民法773条(父を定めることを目的とする訴え)

 第733条第1項の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子を定めることができないときは、裁判所がこれを定める。

〇 民法774条(嫡出の否認)

 第772条の場合において、夫は、子が嫡出子であることを否認することができる。

〇 民法775条(嫡出否認の訴え)

 前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。

〇 民法776条(嫡出の承認)

 夫は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、その否認権を失う。

〇 民法777条(嫡出否認の訴えの出訴期間)

 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならない。

〇 民法778条

 夫が成年被後見人であるときは、前条の期間は、後見開始の審判の取消しがあった後夫が子の出生を知った時から起算する。

(事案1)婚姻中出生

 A(夫)・B(妻) 婚姻

 A(夫)→B(妻) DV

 A(夫)・B(妻) 別居

 B(妻)・C(男)   交際

 B(妻)がXを出産したが、Xの生物学上の父はC(男)である。

 

(事案2)離婚後出生

 A(夫)・B(妻) 婚姻

 A(夫)→B(妻) DV

 A(夫)・B(妻) 別居

 A(夫)・B(妻) 離婚

 B(妻)・C(男)   交際

 B(妻)がXを、離婚後300日以内に出産したが、Xの生物学上の父はC(男)である。

 

 Bが、Xにつき、Cを父とする出生届を提出した場合、役所は、Aの嫡出推定が及ぶことを理由に、不受理するのが通例である。

 それだからといって、Bが、Xにつき、Aを父とする出生届を提出した場合、Bは、Aに、Xの存在を知られてしまう。

→ 無戸籍児が生じる。

 

(参考文献)

 冷水登紀代 無国籍児問題における嫡出否認権者の拡大可能性 論究ジュリスト2020年夏号 120頁

【参考・参照文献】このページは以下の文献を参考・参照して作成しました。

① 松川正毅・窪田充見編 新基本法コンメンタール(第2版)親族137頁

② 加藤新太郎・松本明敏編集、裁判官が説く民事裁判実務の重要論点 家事・人事編(平成28年、第一法規)249頁(本多幸嗣) 

③ 羽生香織 新法解説令和4年民法改正 法学教室514号42頁

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