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土地工作物責任

第3編 債権
第5章 不法行為

〇 民法717条

1項 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。

 ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

2項 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

3項 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

第1 土地工作物責任の意義 

 民法717が定める土地の工作物の占有者・所有者の責任を「土地工作物責任」といいます。

 占有者と所有者の責任は、択一的な関係にあり、占有者の責任が第一次的な責任であり、所有者の責任は占有者の責任が認められない場合の第二次的な責任です。そして、占有者の責任には免責の可能性がありますが、所有者の責任は無過失責任です。

 一般不法行為責任(民法709条)と対比すると、損害賠償請求の相手方に責任を免れるための立証責任を負わせたり(占有者)、無過失責任を負わせて(所有者)、損害賠償請求権者(被害者)を保護する点に特徴があります。

 

第2 土地工作物責任の成立要件

1 土地の工作物

① 「土地の」工作物→土地と工作物との接着性

 この要件を厳密に解したのでは、現代の物的施設の発展に対する本条の意義(無過失責任・危険責任)にそぐわないことが生じる(文献②238頁)。

 接着性は緩和される傾向にある。

〇 建物、塀、石垣、電柱、道路、橋、トンネル、堤防

〇 建物内の機械・設備についても、その据付けが直接土地上であるか建物内であるかによって区別する合理性がない(文献②238頁)、大きな機械は工場の建物と一体をなして工作物と見られる場合が多いと思われます(我妻・有泉コンメンタール民法1337頁(2005年・日本評論社))として、工作物と認めるのが実務的見解といえる。

× 土地に置かれているだけの動産

 

② 「工作物」→人工的作業が加えられたものであること

× 自然のままの池沼

 

2 設置又は保存の瑕疵

(1)工作物の建造又はその後の保守管理に、当該工作物として通常備えるべき安全性を欠いていることをいいます。

 瑕疵の有無について、企業の施設設備全体について判断されることがあり、鉄道の運転手に過失がなかった場合においても、踏切番を置かず、自動警報機を設置していない踏切設備について土地工作物責任を認めた判例があります。企業の施設設備全体について安全性を判断するという枠組みは、個々の従業員について過失が認められず、したがって個々の従業員(一般不法行為責任)にも使用者(使用者責任)にも不法行為責任を追及することができない場面で被害者を救済する意義があります。

(2)設置・保存の瑕疵が原因で損害が発生したこと

 問題:損害の発生が、工作物の瑕疵によること以外に、台風・震災などの不可抗力が加わって生じた場合(文献③239頁)

 

第3 求償

 土地工作物責任を負う者は、他に損害の原因につき責任を負うべき者に対し、求償権を行使できる(本条3項)。

(例)工作物の瑕疵が、工作物を建築した請負人の過失に起因する場合、前所有者の過失による場合

 

 

 

 

【東京高等裁判所平成28年3月23日判決】

 介護老人保健施設での、高齢者転落事故について、土地工作物責任を認めた裁判例を紹介します。

(1)事案は次のとおりです。

 入居していた甲(85歳、認知症による症状・行動が頻繁にみられ、常に介助を必要とする状態であり、帰宅願望がある)は、施設の2解の食堂の窓から外に出て、1階に下りようとしたが、地面に落下し、救急搬送されたが、死亡した。窓には、片開きで7.5cm(両開きで15cm)以上開かないようにストッパーが設置されていたが、本件転落事故の時、甲は窓を21cmまで開放し、外に出た。甲の帰宅願望であるが、転落事故前の甲の行動は、エレベータに乗り込む、廊下の奥の引き戸を叩くというものであり、窓を開けて施設を抜け出そうとしたことはなかった。

 甲の遺族が施設を被告として、安全配慮義務違反の債務不履行責任、工作物責任に基づき提訴した。

(2)裁判所の判断

① 安全配慮義務違反の債務不履行責任は否定

② 工作物責任について

ⅰ 認知症の一般的知見に照らすと、認知症患者が、本件のように通常出入りに利用されない開放部から建物外ほ出ようとすることもあり得るものとして、施設の設置又は保存において適切な措置を講ずべき。

ⅱ 本件のストッパーは、容易にずらすことができ、ごく短時間で大人が通り抜けることができる程度の隙間が開けられる。また、ずらし方は、帰宅願望を有する認知症患者が思いつき得る方法である。そして、ストッパーの使用方法(中間止め)は、製造業者が想定した使用方法でない。よって、本件ストッパーは、窓の開放制限装置としては不適切で、通常有すべき安全性を欠いていたものと認めるのが相当である。

(3)コメント

 第一審は施設の責任を否定したところから分かるとおり、判断が分かれる問題であるが、本件ストッパーを容易に外すことができるとの認定の下では、工作物責任を問われてもやむを得ないところか。

【参考・参照文献】

判例解説Watch2016年10月号99頁(大矢一彦)

【参考・参照文献】

このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。

① 平野裕之・債権各論Ⅱ事務管理・不当利得・不法行為303頁(2019年、日本評論社)

② 近江幸治 民法講義Ⅵ 事務管理・不当利得・不法行為(第3版)(2018年、成文堂)221頁

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