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遺言 ゆいごん について(その1)総論

民法第5編 相続
第7章 遺言
第1節 総則

1 遺言で定めることができること

(1)家族関係の事項

① 認知 民法781条2項 ※1

② 未成年後見人の指定 民法839条1項

③ 未成年後見監督人の指定 民法848条

 

(2)相続に関する事項

① 相続人に関する事項

 推定相続人の廃除及び廃除の取消し 民法893条、894条2項 ※1

② 財産の処分に関する事項(一)

ⅰ 相続分の指定 民法902条

ⅱ 特別受益の持戻しの免除 民法903条3項 ※2

ⅲ 遺産分割方法の指定及び指定の委託 民法908条

ⅳ 遺産分割の禁止 民法908条

ⅵ 遺産分割における担保責任 民法914条

③ 財産の処分に関する事項(二)

ⅰ 包括遺贈・特定遺贈 民法964条

ⅱ 別段の意思表示

a 受遺者の相続人による遺贈の承認・放棄 民法988条

b 受遺者の果実取得権 民法992条

c 停止条件付き遺贈の受遺者の死亡による遺贈の失効

 民法994条2項

d 遺贈の無効・失効の場合における財産の帰属

 民法995条

e 相続財産に属しない権利の遺贈における遺贈義務者の責任

 民法997条2項

f 負担付遺贈の受遺者の免責 民法1003条

④ 遺言執行関係

ⅰ 遺言執行者の指定 民法1006条1項

ⅱ 別段の意思表示

a 特定財産に関する遺言の執行 民法1014条4項

b 遺言執行者の復任権 民法1016条1項

c 遺言執行者が数人ある場合の任務の執行 民法1017条

d 遺言執行者の報酬 民法1018条1項

⑤ 遺言の撤回 民法1022条

⑥ 遺留分関係事項 民法1047条

⑦ その他(一)

  祭祀主宰者の指定 民法897条 ※2

⑧ その他(二)

  民法以外

  (例)保険金受取人の変更 保険法44条、73条

 

※1 生前行為によってもできる。

※2 遺言による旨の定めはないが、遺言によってすることができると解釈されている。

2 上記1以外の事項

  定めたとしても、法的な効力はない。

 

 「遺言」は、法律専門家は「いごん」と読むことが多いが、世間一般では「ゆいごん」と読むこともある。遺言書に記載された事項には、法的に意味のある事項と法的には意味がないが故人・遺族にとっては意味のある事項(例えば、遺族の兄弟に対し、「兄弟仲良く協力し合ってやって欲しい」というメッセージを残す場合)がある。広い意味での遺言の意味も考えると、「ゆいごん」という読み方もしっくりくるように思われる(参照:窪田充見「家族法(第3版)」458頁(2017年・有斐閣))

【論点】 遺言能力

1 「遺言能力」とは、遺言を作成するに当たり必要な精神能力のことをいいます。

 まず、形式的な要件として、15歳以上であれば、遺言をすることができます(民法961条)。民法の成年年齢である20歳よりも引き下げた理由は、遺言は遺言者の最終意思であり、同人が生存中は同人に不利益を与えることはないためです。

 次に、実質的な要件として、遺言の内容及び結果を理解する能力が必要です。民法は、行為能力の規定(民法5条、9条、13条、19条)の遺言への適用を排除しており、被成年後見人も一定の要件(※)を満たせば遺言をすることができますが、例えば、重度の認知症の方は遺言能力がないと判断される可能性が高いといえます。

※ 民法973条は、成年被後見人の遺言の有効要件を次のとおり定める。

① 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復すること

② 医師2人以上の立会いで遺言が作成れさること

③ ②の医師が、遺言者が遺言をする時において、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名押印する。(秘密証書遺言については、その封紙にその旨の記載をし、押印する。)

2 遺言能力の判断

 次の要素が考慮される。

① 遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度

(ⅰ)精神医学的観点

精神科学的疾患(認知症、統合失調症等)の存否、内容及び程度(重症度)

(ⅱ)行動観察的観点

遺言時又はその前後の症状、言動等

② 遺言内容それ自体の複雑性

 遺言内容が複雑になる程、理解が容易でなくなるので、遺言者により高度の判断能力が求められる。

③ 遺言の動機・理由、遺言者と相続人又は受遺者の人間関係・交際状況、遺言に至る経緯など

 例えば、相続人が複数いるにもかかわらず、全遺産を遺言者が最近知り合った知人に遺贈する内容の遺言は、遺言能力に疑義を生じさせる可能性かある。

3 遺言能力に関する紛争の予防

(1)遺言の無効を主張する者が、遺言者が遺言作成当時、遺言能力がなかったことを主張立証する必要があります。

(2)ある程度の高齢の方又は精神疾患がある方が遺言をする場合、精神心理学的検査(長谷川式簡易知能評価スケール、N式老年者用精神状態尺度等)を実施し、医師に診断書を作成してもらう等の工夫が必要です。

 

【参考・参照文献】

満田忠彦・小圷眞史「遺言モデル文例と実務解説」(2015年・青林書院)、東京地方裁判所民事部プラクティス委員会第二小委員会「遺言無効確認請求事件を巡る諸問題」(判例タイムズ1380号4頁)、村上博一「相続法実務入門」(関西学院大学出版会・2015年)204~217頁

〇 民法960条(遺言の方式)

 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

1 本条は、遺言が要式行為であることを定めたものである。

2 方式違背の場合は、遺言としての効力は生ぜず、原則として無効である。

 

[遺言の方式]

1 普通方式

① 自筆証書遺言 民法968条

② 公正証書遺言 民法969条

③ 秘密証書遺言 民法970条

2 特別方式

(1)危急時遺言

① 一般危急時遺言 民法976条

② 難船危急時遺言 民法979条

(2)隔絶地遺言

① 伝染病隔離者遺言 民法977条

② 在船者遺言 民法978条

 

 

 

〇 (遺言能力)民法961条

  十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

〇 民法962条

 第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。

〇 民法963条

 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

1 民法961条~963条は、遺言を作成する能力を定めたものである。

2 法文

① 年齢 15歳以上 961条

② 民法総則編に規定された制限行為能力者の行為に関する規定は、適用されない。 962条

③ 遺言能力

  遺言作成時に備わっていることが必要 963条

 

 

○ 民法964条(包括遺贈及び特定遺贈)

 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

○ 民法965条(相続人に関する規定の準用)

 第886条(相続に関する胎児の権利能力)及び第891条(相続人の欠格事由)の規定は、受遺者に準用する。

○ 民法966条(被後見人の遺言の制限)

1項 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。

2項 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用しない。

◇◇◇ 遺言をめぐる諸問題(1) ◇◇◇

相続させる旨の遺言等と代襲相続

 

1 最高裁平成23年2月22日第三小法廷判決

① 母親を被相続人とし、長男と長女を相続人とする事案で、母親が所有財産全てを長男に相続させるとの公正証書遺言を作成した。

② 母が平成18年7月23日に死亡した。

③ 長男が②の約3か月前に死亡していた。

④ 長女は、長男が母親より先に死亡したので、遺言は失効したと主張し、長男の代襲者(代襲相続人)は、この場合、代襲相続の規定が準用され、Bの代襲者が全遺産を相続することができると主張して、長女の主張を争いました。

 

 最高裁判決は、遺言者が、このような場合、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、効力は生じることはないと解するのが相当であると判断し、長女の主張を認めました。

 

 この最高裁を踏まえて、遺言者が、遺言者より以前に長男が死亡した場合、遺言者の孫・長男の子に財産を相続させたいという意向の場合、次のような条項(予備的遺言と呼ばれることがあります)を遺言に付加すべきとされています。

[例]

遺言者は、遺言者の有する一切の財産を遺言者長男A(生年月日)に相続させる。

遺言者の長男が遺言者より以前に死亡していた場合、遺言者は、遺言者の有する一切の財産を遺言者の孫B(生年月日)に相続させる。

 

【参考・参照文献】

① 安達敏男・吉川樹士 代襲相続・再転相続・数次相続の

法律と実務(2022年、日本加除出版)47頁

 

 

【参考・参照文献】

以下の文献を参考・参照して作成しました。

① 二宮周平 家族法(第5版)(2019年、新世社)421頁~

② 窪田充見 家族法(第4版)(2019年、有斐閣)447頁~

③ 内田貴 民法Ⅳ[補訂版]親族・相続(2004年、東京大学出版会) 頁~

 

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