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相続 限定承認

民法5編 相続
第4章 相続の承認及び放棄
第2節 相続の承認
第2款 限定承認

〇 民法922条(限定承認)

相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

[解説]

1 限定承認の定義を規定した条文である。

2 限定承認の機能

① 相続人が調査(民法915条2項)したにもかかわらず被相続人の資産負債の詳細が判明しなかった。このような状態で、単純承認すると、相続開始後、負債が発見し、その結果、「資産<負債」であった場合、その差額は、相続人が自己固有の資産で負担しなければならない。このようなリスクを避ける。

② 被相続人の資産負債の状態が「資産<負債」であるが、資産の中に、相続人が承継したい資産がある。この場合、限定承認の手続を利用すれば、当該資産を確保できる可能性がある(民法932条ただし書)。

3 限定承認の利用状況

相続放棄と比べると、あまり利用されていない。

その理由は、下記①②③のとおりである。

① 手続が複雑煩瑣であり、利用する相続人にとって、手続的な負担が重い。

② 相続人が複数いる場合、相続人全員がそろって限定承認しなければならない。

相続人が甲、乙、丙がおり、丙が相続放棄した事案であれば、甲と乙が限定承認する必要がある。

(文献③の【CASE81】)

相続人が甲、乙、丙がおり、丙が単純承認した事案であれば、甲と乙が限定承認できない。

(文献③の【CASE82】参照)

4 解釈

① 相続によって得た財産

② 債務

5 限定承認も、承認の一種であるため、債務は全額承継する。ただ、相続財産(積極財産)を超過する分は責任を負わない。相続人が相続債権者に対し、この分を任意に弁済することは有効であり(自然債務)、非債弁済とはならない。

家事事件手続法

第2編 家事審判に関する手続

第14節 相続の承認及び放棄に関する審判事件

 

201条 

1項 相続の承認及び放棄に関する審判事件(別表第一の八十九の項から九十五の項までの事項についての審判事件をいう。)は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

2項 前項の規定にかかわらず、限定承認の場合における鑑定人の選任の審判事件(別表第一の九十三の項の事項についての審判事件をいう。)は、限定承認の申述を受理した家庭裁判所(抗告裁判所が受理した場合にあっては、その第一審裁判所である家庭裁判所)の管轄に属する。

3項 家庭裁判所(抗告裁判所が限定承認の申述を受理した場合にあっては、その裁判所)は、相続人が数人ある場合において、限定承認の申述を受理したときは、職権で、民法第九百三十六条第一項の規定により相続財産の管理人を選任しなければならない。

4項 第百十八条の規定は、限定承認又は相続の放棄の取消しの申述の受理の審判事件(別表第一の九十一の項の事項についての審判事件をいう。)における限定承認又は相続の放棄の取消しをすることができる者について準用する。

5項 限定承認及びその取消し並びに相続の放棄及びその取消しの申述は、次に掲げる事項を記載した申述書を家庭裁判所に提出してしなければならない。

一 当事者及び法定代理人

二 限定承認若しくはその取消し又は相続の放棄若しくはその取消しをする旨

6項 第四十九条第三項から第六項まで及び第五十条の規定は、前項の申述について準用する。この場合において、第四十九条第四項中「第二項」とあるのは、「第二百一条第五項」と読み替えるものとする。

7項 家庭裁判所は、第五項の申述の受理の審判をするときは、申述書にその旨を記載しなければならない。この場合において、当該審判は、申述書にその旨を記載した時に、その効力を生ずる。

8項 前項の審判については、第七十六条の規定は、適用しない。

9項 次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者は、即時抗告をすることができる。

一 相続の承認又は放棄をすべき期間の伸長の申立てを却下する審判 申立人 

二 限定承認又は相続の放棄の取消しの申述を却下する審判 限定承認又は相続の放棄の取消しをすることができる者

三 限定承認又は相続の放棄の申述を却下する審判 申述人

10項 第百二十五条の規定は、相続財産の保存又は管理に関する処分の審判事件について準用する。この場合において、同条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「相続財産」と読み替えるものとする。

 

【家事事件手続法に関する参照、参考文献】

① 秋武憲一・片岡武編著コンメンタール家事事件手続法Ⅱ(2021年、青林書院)794頁以下(執筆者:中井彩子) 

〇 民法923条(共同相続人の限定承認)

相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

1 相続人が数人=共同相続 の事案 → 限定承認は、共同相続人全員で行う必要がある。

2 相続人が甲乙丙であり、丙が相続放棄した場合、甲乙だけで限定承認を行うことができる。

〇 民法924条(限定承認の方式)

相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。

1  本条は、限定承認の方式を定めたものである。

2 民法915条1項所定の期間内

  いわゆる熟慮期間

 共同相続人甲乙丙がいる場合、期間は各共同相続人毎に計算し、最後に期間が満了する者についての終期が、限定承認できる期間の終期となる。

 申述が、熟慮期間中になされればよく、申述受理の審判が同 

期間内にされる必要はない(文献①177頁)。

 

 

3 財産目録の作成

① 相続財産の調査(民法915条2項)→財産目録の作成

② 財産

  a 積極財産(プラスの財産、資産)

  b 消極財産(マイナスの財産、負債)

③ 悪意の不記載 法定単純承認事由 民法921条3号本文

4 申述

5 家事事件手続法

 

〇 民法925条(限定承認をしたときの権利義務)

相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかったものとみなす。

 

〇 民法926条(限定承認者による管理)

1項 限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。

2項 第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項及び第二項並びに第九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

〇 民法927条(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)

1項 限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。

2項 前項の規定による公告には、相続債権者及び受遺者がその期間内に申出をしないときは弁済から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者を除斥することができない。

3項 限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければならない。

4項 第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

 

1 5日以内(本条1項)

① 限定承認申述受理の告知があった日の翌日かにはさてとた5日以内

② ①の期限も不可能であることが多いため、5日経過後の公告も無効とはされない。

谷口知平・久貴忠彦編 新版注釈民法(27)相続2(平成25年、有斐閣)571頁(松原正明)

 

 

 

 

 

〇 民法928条(公告期間満了前の弁済の拒絶)

限定承認者は、前条第一項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。

〇 民法929条(公告期間満了後の弁済)

第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

〇 民法930条(期限前の債務等の弁済)

1項 限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に従って弁済をしなければならない。

2項 条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。

〇 民法931条(受遺者に対する弁済)

限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

〇 民法932条(弁済のための相続財産の換価)

前三条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

〇 民法933条(相続債権者及び受遺者の換価手続への参加)

相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができる。この場合においては、第二百六十条第二項の規定を準用する。

〇 民法934条(不当な弁済をした限定承認者の責任等)

1項 限定承認者は、第九百二十七条の公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第一項の期間内に相続債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによって他の相続債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなったときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。第九百二十九条から第九百三十一条までの規定に違反して弁済をしたときも、同様とする。

2項 前項の規定は、情を知って不当に弁済を受けた相続債権者又は受遺者に対する他の相続債権者又は受遺者の求償を妨げない。

3項 第七百二十四条の規定は、前二項の場合について準用する。

〇 民法935条(公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者)

第九百二十七条第一項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかったものは、残余財産についてのみその権利を行使することができる。ただし、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。

〇 民法936条(相続人が数人ある場合の相続財産の管理人)

1項 相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人を選任しなければならない。

2項 前項の相続財産の管理人は、相続人のために、これに代わって、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。

3項 第九百二十六条から前条までの規定は、第一項の相続財産の管理人について準用する。この場合において、第九百二十七条第一項中「限定承認をした後五日以内」とあるのは、「その相続財産の管理人の選任があった後十日以内」と読み替えるものとする。

〇 民法937条(法定単純承認の事由がある場合の相続債権者)

限定承認をした共同相続人の一人又は数人について第九百二十一条第一号又は第三号に掲げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産をもって弁済を受けることができなかった債権額について、当該共同相続人に対し、その相続分に応じて権利を行使することができる。

 

【参考・参照文献】

 下記文献を参考・参照して作成しました。

① 松原正明・全訂判例先例相続法Ⅲ(平成20年、日本加除出版)174頁

② 雨宮則夫・石田敏明・近藤ルミ子編・相続における承認・放棄の実務Q&Aと事例(平成25年、新日本法規出版)

③ 潮見佳男 詳解相続法第2版(2022年、弘文堂)89頁

④ 松岡久和・中田邦博編 新・コンメンタール民法(家族法)(2021年、日本評論社)[高橋朋子]341頁

 

 

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